現在、そごう美術館で開催されているのは、
“ミレーから印象派への流れ展” という展覧会。
農民画家として知られるミレーの作品から、
モネやルノワール、セザンヌといった印象派の画家たちの作品まで。
19世紀フランス美術の流れを辿ることができる展覧会です。
さて、2020年はコロナのせいで、
多くの西洋美術の展覧会が、中止や延期となってしまいました。
そんなこともあって、正直なところ、
この展覧会には、そこまで期待していませんでした。
国立新美術館でも東京都美術館でも、
西洋美術の展覧会が開催されなかったというのに。
百貨店の美術館に、大した作品が展示されているわけなんて・・・・・
ジャン゠バティスト・カミーユ・コロー 《カステル・ガンドルフォ、アルバーノ湖畔で踊るチロルの羊飼い》
クロード・モネ 《睡蓮》
ポール・セザンヌ 《プロヴァンスの風景》
あるんかい!!!
いやはや、普通にビックリしました。
出展数は、約70点。
フランスのトマ=アンリ美術館、ドゥエ美術館、カンペール美術館、
および、イギリスの国立ウェールズ美術館と個人蔵のコレクションで構成されています。
この状況下で、これだけの作品を海外から借りてこられたことに、ただただ脱帽。
そして、感服。
関係者の皆様に、心から感謝したくなった展覧会です。
しかも、何より驚きだったのが、
出展作品の中に、ミレーの 《モーセに扮した自画像》 が含まれていたこと。
こちらは、ミレーのあるエピソードとともに知られる作品です。
モーセのコスプレをした (?) ミレー。
その顔は、明らかに怒っていますよね。
そして、その指先にもご注目くださいませ。
十戒の石版を手に持ち、数字のⅧを指さしています。
十戒の八番目が説いているのは、『隣人に偽るなかれ』 です。
一体、ミレーに何があったのでしょうか?
ある日、ミレーの元に、シェルブール市の市議会から、
亡くなった前市長の肖像画を描いてほしいという注文が舞い込みます。
生前に面識のなかったミレーは、資料を集め、
それらをもとに肖像画をなんとか完成させました。
ところが、その肖像画を目にした市議会は、
前市長に似ていないと難癖をつけて、買い取りを拒否したのです。
その処遇にブチ切れたミレーは、この自画像を描き、
前市長の肖像画とセットで市議会に送り付けたのだとか。
結果、シェルブール市は、ミレーに当初提示した金額の3分の1を支払ったのだそう。
『あなたは芸術以外にも、礼儀作法を学んだほうがいい』 という言葉とともに。
ちなみに。
展覧会には、他にも数点ミレーの作品が出展されています。
中でも印象的だったのは、ポスターのメインビジュアルにもなっている 《冬、薪集め》。
背負っている薪の量がハンパではありません!
二宮金次郎が霞んでしまうほどの量です。
一瞬、丸太を担いでいるのかと思いました。
それと、もう一つ印象的だったのが、最初の妻を描いた作品。
《部屋着姿のポーリーヌ・オノ》 です。
実物は、尋常でないほどの顔色の悪さでした。
あまりにも青白すぎて、
そういうお面を被っているように見えたほど。
モデルをしている場合ではないです。
さて、ここからは、ミレー以外の作品で、
印象に残ったものもいくつかご紹介いたしましょう。
まずは、モーリス・ドニの 《小舟のブルターニュの女性》 から。
浮世絵の影響を大きく受けていたとされるドニ。
この絵は、浮世絵と言うよりも、
その構図といい、波の表現といい、
琳派の浮舟図の影響を受けているような気がしました。
それはともかくとして。
母一人子一人で小舟に乗って、海原へ。
一体どういうシチュエーションなのでしょう??
無理心中的なことでないことだけを願うのみです。
続いては、アンリ・ル・シダネルの 《日曜日》。
草原のような場所に、白い服を着た女性たちが何人も。
画面左には、少女たちの姿も見て取れます。
これまた、どういうシチュエーション??
ただ、初めて目にする絵なのに、
どこかでこの光景を見たことがあるような、デジャヴを感じました。
資生堂かカネボウあたりの化粧品のCMで、こんなんあったような。
最後に紹介したいのは、こちらのルノワールの作品。
タイトルは 《会話》 とのこと。
ただ、どう見ても、会話は弾んでいるようには見えません。
女性はきっと上の空、話の半分を聞き流しているのでしょう。
男性もおそらくそのことに気付いているはず。
しかし、エピソードトークを始めてしまったため、
やめるにやめれず、オチまで喋り続けているのでしょう。
お互い、地獄の時間です。