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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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DOMANI・明日展2021

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美術や音楽、メディア芸術といった各分野における新進芸術家を、

海外の関係機関などで実践的な研修をする機会を与える文化庁の制度。
それが、新進芸術家海外研修制度です。

その制度により過去に海外派遣された芸術家たちが、
研修生活で得た成果を発表する展覧会 “DOMANI・明日展”

今年も無事に国立新美術館で開催される運びとなりました!

 

 

 

昨年は、ベテラン作家にスポットを当てた異色の回でしたが。

今回は原点に戻る形で、過去10年以内に、

海外で研修した7名の若手作家が紹介されています。

星
 

 

印象に残った作家は、ちらほらいますが、

まずは何と言っても、メインビジュアルにも選ばれている大田黒衣美さんです。

 

 

 

実は、こちらはガムを素材にした絵画 (ちぎり絵的な)。

しかも、キャンバスは、なんと猫の身体なのだそう。

猫が動かないように、ソーっとガムを乗せているのか。

はたまた、ガムを乗せられても、猫が気にならないようになったのか。

猫好きとしては、いろいろ妄想してしまいました。

 

 

 

また、絵画作品だけでなく、

ガムをモチーフにした立体作品も展示されていました。

 

 

 

こちらは、陶土でできたガムとのこと。

表面の線があるだけで、ちゃんとガムに見えてくるから不思議なものです。

ところで、何でガムの表面には、こんな線があるのでしょう??

作品とは直接関係ないですが、気になったので調べてみました。

その結果、表面に切れ目があることで、

表面積が多くなり、味付け材がたくさん付着させられるという事実が判明。

また、包装の銀紙が剥がれやすくなる効果もあるそうです。

一つ勉強になりました。

 

 

続いて印象的だったのは、利部志穂さん。

彼女は、ホームセンターで購入できるモノや、

生活のなかで不要となったモノ、廃棄物といった様々なモノを解体し、

それを組み合わせることで、インスタレーション作品を生み出すアーティストです。

派遣先にはイタリアのミラノを選んだそうで、

ステートメントでは、そのイタリアへの愛を熱く語っていました。

なので、作品も当然イタリア感があるのかと思いきや・・・・・

 

 

 

そうでもなかったです (笑)

 

どこがどうイタリア?

もしかしたら、ピサの斜塔か、

ドゥオーモをモチーフにしているのでしょうか??

ちなみに、その先端には・・・・・

 

 

 

スタバの紙袋が置かれていました。

そこは、せめてセガフレード・ザネッティではなかろうか。

 
 
もう一人印象的だったのが、
平面作家の髙木大地さんです。
 
 
 
その作風は、どこかムンクのようであり、どこかハマスホイのようであり。
なんともいえない寂寥感が漂っていました。
 
 
 
この世とあの世をつなぐ場所。
作品を目にした瞬間、
そんな言葉が、フッと頭に湧いてきました。
 
 
なお、今展には、若手作家とは別に、
2組3人の中堅作家も参加しています。
一人は、彫刻家の袴田京太朗さん。
色とりどりのアクリル板を何層にも重ねた独創的な彫刻を作るアーティストです。
 
 
 
そして、もう1組は、竹村京さん鬼頭健吾さんご夫妻。
 
 
 
合作もあれば、それぞれ独立した作品も。
作家夫婦ならではの面白さがある展示空間でした。
 
 
 
どうしても若手作家と見比べる形になるので、
中堅作家の力量と安定感が際立って感じられました。
 
 
ちなみに。
個人的にもっとも惹かれたのは、新里明士さんのコーナーです。
 
 
 
新里さんは、白磁の生地に穴を開け、
その穴の部分に透明な釉薬をかける伝統的な技法、
 「蛍手」 を現代的なデザインに高めた陶芸作家です。
伝統的でありながら、スタイリッシュ。
唯一無二の作品世界を確立しています。
昨年のトークショーをはじめ、
もうかれこれ何年も前からお世話になっているので、
見慣れた作品に会いに行く感覚で、新里さんのコーナーに足を踏み入れました。
ところが、作品を目にした瞬間、
想像していない展開に、思わず声をあげてしまいました。
 
 
 
えっ、割れてる!!
 
フォルムといい。
穴の開き方といい。
一切隙が無い完璧な作品が、新里さんの代名詞。
しかし、これまでは失敗と取られていたヒビや、
欠損した部分にも美があるのではと思い至ったそうで、
今回は、あえてこれらの作品を発表することにしたのだそうです。
 
 
 
確かに、もとが美しすぎるだけに、
ヒビや欠損部分に、かえって凄みのようなものを感じました。
どんなに美しいものも、いつかは壊れる。
そんな無常感を覚えずにはいられない逸品です。
 

 

 

 

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