現在、GALLERY A4 (エー クワッド) では、
“樹の一脚展 人の営みと森の再生” という展覧会が開催されています。
こちらは、30人 (組) の作家・工房が、
今展のために制作した 「一脚の椅子」 を展示するものです。
使用されているのは、木材。
それもただの木材でなく、神戸の六甲山と、
埼玉県の三富 (さんとめ) 地域の雑木林で伐採された地域材です。
自分は、木工は観る専門で、作ったことが全くないため、
「どんな木材でも、たいていのモノは作れるんじゃないの?」 と軽く考えていたのですが。
なんでも地域材は種類や形が雑多なため、
木工作家、木工職人泣かせな木材なのだそう。
しかし、身近な森や雑木林が整備されず、
放置されている現在の危機的状況を少しでも解決すべく、
地域材を使用した椅子作りに挑む今展が企画されたようです。
何と言っても、今展の一番のポイントは、
展示されている椅子に、実際に触れられること。
もちろん座るのも、OK。
坐ることを拒否されない椅子なのです。
椅子をフィーチャーした展覧会ながら、
展示品の椅子には座れない “すわりが悪い” 展覧会は、ままありますが。
今展は心置きなく、その座り心地を堪能することが出来ます。
やはり椅子の真価は座った時に発揮されるもの!
椅子好きにはたまらない展覧会でした。
最近は、長時間ゲームをしても疲れないゲーミングチェアが人気ですが。
改めて、座ってみると、やはり木の椅子は、
他の素材と違って、ぬくもりがあって良いですよね。
リアルに欲しい木の椅子は多々ありましたが。
どれか一脚をくれるというならば (←?)、
児玉正和さんによるこちらの椅子を選びたいと思います。
木に包まれる感覚を味わえる椅子とのこと。
座ると、身体がすっぽりと収まり、
不思議な心地よさ、安心感を覚えました。
それから、安森弘昌さんによるこちらの椅子。
目指したのは、お尻ではなく太ももで座り、
まるで正座しているような、腰が楽な椅子とのこと。
確かに座ってみると、ちょうど座面が腰に当たり、自然と背筋がシャンとしました。
それでいて、全然苦にならないという。
この椅子に座り続けていたら、自然と背筋も矯正されるはず。
自他ともに認める背筋の悪さの僕には、夢のような椅子でした。
見た目だけで選べば、久津輪雅さんの 「アオハダとムクノキの椅子」。
樹皮をデザインに活かしているのが、新鮮でした。
もちろん座り心地も良かったです。
インテリアとしても、オブジェとしても、部屋に飾りたくなる椅子でした。
六甲山の木材で制作された中野潤さんの椅子も、印象的な一脚。
いや、二脚です。
こちらは、スタックできる木製椅子。
スタックというのは、上から重ねるのが一般的です。
しかし、テーブルが前にあった場合、
椅子をスタックするのは、意外と面倒なもの。
そこで、中野さんが考えたのが、後ろから重ねられるスタッキングチェア。
ありそうでなかった、まさにコロンブスの卵のような発想です。
ちなみに、タイトルは 「HT Stackable Armchair」 とのこと。
「HT」 とあるのは、この椅子を向かい合わせにおいて、
横から見ると、阪神タイガースのマークに似ているからだそう。
なるほど。六甲つながり。