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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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VOCA展2021

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全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者らによって推薦された、
40才以下の若手作家が平面作品の新作を出品するという方式で開催される展覧会。
それが、VOCA展です。

壁面に展示できて、250cm×400cm以内のサイズであれば、出展OK!
平面作品=絵画作品、版画作品に限らず、

映像作品や写真作品も出展OKとなっています。
また、“厚さ20㎝以内であれば平面とみなす” というルールのため、
その条件を満たせば、20cm以内の薄型立体作品もOKということです。
要するに、ほとんど何でもあり状態な展覧会です (笑)

過去には、村上隆さんや奈良美智さん、蜷川実花さんをはじめ、
日本を代表する現代アーティストが、若き日にVOCA展に出展しています。
いうなれば、VOCA展は、若手作家の登竜門!
多くの若手作家にとって、VOCA展は憧れのステージなのです。

 

 

例年、参加作家には、8月頃に推薦された旨の連絡が入るのだそう。

そして、そこから約3か月間で新作を仕上げるそうです。

コロナ禍での制作ということで、例年以上に大変だったでしょうが、

“VOCA展2021” には、無事に30人 (組) のアーティストの作品が出品されました。

 

 

 

栄えあるグランプリ、今回のVOCA賞を受賞したのは・・・・・

 

 

 

尾花賢一さんの 《上野山コスモロジー》 です。

漫画風のスタイルで作品を制作する尾花さん。

今回は、VOCA展の会場となる上野の森美術館にちなんで、

上野をテーマに、上野の過去と現在とをレイヤーのように重ねた作品に仕上げました。

 

 

 

モナリザ来日やパンダブームのような明るい話題もあれば、

毎日のように見かける似顔絵師や公園に寝泊まりするホームレスといったトピックも。

改めて、上野という街の雑多さ、ごった煮ぶり、

そこから生じるカオスなパワーを感じさせられました。

ちなみに、こんな1コマも。

 

 

 

上野オークラ劇場。

上野を訪れるたびに、ついつい気になってしまいますが、

結局一度も入ったことはないピンク映画専門の映画館です。

動物園があり、子供も多く集まる公園の近くに、

何でまたこんな映画館があるのか、よく考えたら、謎も謎。

ヌード画を見た後に、本物 (?) を見たくなるというような需要でもあるのでしょうか。

星

 

 

続くVOCA奨励賞を受賞したのは、

鄭梨愛 (ちょん りえ) さんの 《Vision》 という作品。

 

 

 

くしくもVOCA賞の尾花さんの作品と同様に、

レイヤーが重要な要素となっている作品です。

薄い布にプリントされているのは、

鄭さんの祖母の若い時の姿や、母に介護される祖父の姿、

韓国にある祖父の墓の画像とのこと。

どこか朧げなその様子を眺めていると、

まるで走馬灯を見ているかのような印象を受けました。

 

同じく、VOCA奨励賞を受賞したのは、

水戸部七絵さんの 《Picture Diary 20200910》

水戸部さんといえば、以前こちらの記事でも紹介しましたが↓

 

 

 

絵の具をもりもり盛り上げる画家です。

VOCA展の規定は、厚さ20㎝以内。

“まさか計量オーバーで失格なんて事態に?!”

と心配だったのですが、無事にルールをクリアしたようです。

しかも、ちゃんと作品が壁にかかっています。

 

 

 

普段は人間の顔をモチーフに描いている彼女ですが、

今作は、インターネットで目にしたニュース映像をモチーフにしたのだそう。

ということは、右は、ミロ販売休止のニュース・・・と思いきや、

ブラジルサッカー代表の男女の給料が同一になったニュースをモチーフにしているのだとか。

左は、チンパンジー関連のニュース・・・ではなく。

奴隷貿易との関与を理由に、創立に寄与したハンス・スローンの胸像が、

大英博物館から撤去されてしまったニュースが、そのモチーフなのだそうです。

 

 

なお、VOCA佳作賞は、弓指寛治さんの 《鍬の戦士と鉄の巨人》 と、

 

 

 

岡本秀さんの 《複数の真理とその二次的な利用》 が、それぞれ受賞しています。

(※岡本さんの作品は大原美術館賞も同時に受賞)

 

 

 

受賞された皆様、

本当におめでとうございました!

 

 

さてさて、惜しくも受賞を逃したものの、

印象に強く残る作品は多々ありました。

例えば、長田綾美さんの 《103.000》 という作品。

 

 

 

こちらは、絞りの技法を用いて、ブルーシートに、

タイトルにある通り103000個のBB弾を縫い付けた作品です。

想像するだけで、気が遠くなるような作業。

しかも、それだけ労力を注ぎ込んだところで、

特に完成形が美しい姿になっているわけでもないという・・・。

もし、VOCA頑張ったで賞があれば、

間違いなく、受賞したと思われます。はい。

 

 

また例えば、衣真一郎さんの 《積み重なる風景》 という作品。

 

 

 

山や家、埴輪や古墳といったさまざまなモチーフが、

ルール無視で配置された、よく言えばおおらかな作品です。

悪く言えば、子どもが描いたみたいな。

それだけに、この絵がパッと目に飛び込んできた瞬間に、

「♪子供でいた~いずっと、トイザらズキッズ」 というあのCM曲が脳内で再生されました。

 

 

個人的に一番惹かれたのは、

八木佑介さんのこちらの作品です。

 

 

 

午前2時の都市の風景を、日本画で描いているという八木さん。

今作では、電線が不吉に絡まる情景が描かれています。

タイトルは、《共食い》

実に意味深。

角川ホラー文庫の表紙に使われそうな一枚です。

ちょうど今、“電線絵画展” が盛り上がっているので、

VOCA展が終わり次第、この作品が練馬区立美術館に行けばいいのに。

 

 

ちなみに、上野の森美術館では、現在、

VOCA展2006に参加した鬼頭健吾さんの展覧会が同時開催中。

 

 

 

ギャラリー空間が大量のフラフープで埋め尽くされていました。

映えること映えること。

 

 



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