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Book:39 『新説 東洲斎写楽 浮世絵師の遊戯』

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■新説 東洲斎写楽 浮世絵師の遊戯

 

 作者:高井 忍
 出版社:文芸社
 発売日:2021/2/5
 ページ数:448ページ

江戸時代後期に突如現れ、

わずか10ヶ月の活動期間に数々の名作を残し、

忽然と姿を消した浮世絵師、東洲斎写楽。

その正体を巡り、4つの歴史談義が繰り広げられる。

異説珍説数多ある中で、写楽が謎の絵師とされてしまったその理由とは…?

緻密な検証とユーモアたっぷりの発想で贈る、歴史謎解きエンターテインメント。

単行本未収録の新エピソードを含め、大幅に改稿。
(文芸社HPより)

 

 

写楽の正体は、一体何者なのか?

 

 北斎か歌麿か、版元の蔦屋重三郎か。

 はたまた、外国人か。

 もしくは、宇宙人か。それとも、未来人か。

 

 かつては、その正体を巡って、

 さまざまなトンデモ説まで浮上していましたが。

 今ではすっかり、阿波藩お抱えの能役者、

 斎藤十郎兵衛とする説が定着しているようです。

 

 さて、短編3編と中編1編が収録されたこの1冊

 舞台となる場所や時代、登場人物はすべて異なりますが、

 どの小説も、写楽の正体について迫る内容となっています。

 

 これまでに、あらゆる可能性が出尽くしている感があるので、

 斬新な説は出てこないだろうと、

 あまり期待はしていなかったのですが。

 

 まぁ新たな説が出るわ出るわ!

 

 『写楽=斎藤十郎兵衛』 という設定を守りつつ、

 それを踏まえたうえで、他の可能性は考えてみる、

 あるいは、無理やりこじつけてみるというスタンスが功を制していました。

 

 そんなわけないだろ、と内心ツッコミながらも、

 一応辻褄はあっているので、感心しながら読み進めることができました。

 ただ、こんな無茶苦茶な説でも、

 論理さえ破綻していなかったら成立するということは、

 えん罪もこうして生まれるのかもしれません。

 と、本筋とは関係ないところで恐怖を覚えてしまいました (笑)

 

 個人的に一番面白く感じたのは、

 『写楽 一七九四年』 という一篇です。

 ある日、蔦屋重三郎は若き日の北斎に、

 写楽という名で、浮世絵を描くように命じます。

 しかし、この小説の世界の人物たちは、後の世で、

 『写楽=斎藤十郎兵衛』 が定着することを知っているという設定です。

 そこで、蔦屋重三郎は滝沢馬琴に、

 『写楽=北斎説』 が成立する理屈を考えるよう命じます。

 熟考の末に、馬琴が導き出した理屈 (屁理屈?) は、

 北斎と関りの深いあの人物が大きく関わるという大胆な説でした。

 この発想はなかった!

 

 それと、写楽の正体以上に、個人的にビックリしたのが。

 ドイツの美術研究家ユリウス・クルトが、その著書 『Sharaku』 で、

 写楽をレンブラントやベラスケスと並ぶ 「世界三大肖像画家」 と称賛したというエピソード。

 それは、まったくのガセネタなのだそう。

  『Sharaku』 の中には、そんな記述が一切ないそうです。

 確かに、冷静に考えてみれば、

 ラファエロとかルーベンスとかゴッホとか、候補は他にゴロゴロいますよね。

 

 説自体はどれも面白かったのですが、論理が破綻しないように、

 丁寧に一つ一つ穴を潰していくその描写が冗長で、若干くどかったか。

 スター スター スター ほし ほし(星3.0)」

 

 

~小説に登場する名画~

《四代目松本幸四郎の山谷の肴屋五郎兵衛》

 





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