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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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与謝蕪村 「ぎこちない」を芸術にした画家

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府中市美術館の春の恒例企画。
それが、春の江戸絵画まつり

 

2018年は、『リアル』。

 

 

 

2019年は、『へそまがり』。

 

 

 

そして、昨年2020年は、『普通』。

 

 

 

・・・・・と、毎年さまざまな切り口で、

江戸美術が紹介されてきましたが。

今年は珍しく、個展形式。

『菜の花や 月は東に 日は西に』 や、

 『春の海 ひねもすのたり のたりかな』 といった俳句でお馴染み、

俳人にして、画家でもある与謝蕪村をフォーカスした展覧会となっています。

 

与謝蕪村にスポットを当てた展覧会は、

これまでにも日本各地で多く開催されていますが。

 

 

 

“与謝蕪村 「ぎこちない」を芸術にした画家” と題された今展では、

与謝蕪村の魅力を 『ぎこちない』 というキーワードで紹介しているのが最大のポイントです。

 

確かに、指摘されてみれば、目からウロコ。

 

与謝蕪村 《「涼しさに」自画賛》(部分) 個人蔵

 

 

ヘタウマなタッチの絵画も、クセの強い字も、

『ぎこちない』 という言葉が、しっくりくる気がします。

また、初期の絵に見られる特徴的な線の引き方。

 

京都府指定文化財 与謝蕪村 《方士求不死薬図屛風》  施薬寺蔵

 

 

「スッ」 「スーッ」 という感じではなく、

どこか 「ググッ」 と引っかかっているようなこの線の引き方を、

キャプションでは、ギコギコした線と紹介していました。

ギコギコだから、ぎこちない。

なるほど。言われてみれば、そんな風に見えてきました。

さすが、目の付け所が府中市美術館です。

星星

 

さてさて、ここからは出展作の中で、

特に印象に残った作品をいくつかご紹介いたしましょう。

まずは、《「日の春を」画賛》 という一枚。

 

与謝蕪村  《「日の春を」画賛》  個人蔵

 

 

おそらく鶴を描いたものなのでしょうが。

首が若干短いような。足の生え方がおかしいような。

そもそも輪郭線が途切れ途切れで、

切り取り線みたいになってしまっています。

ちなみに、鶴の身体が白いのは、

絵絹の裏側に貼られた裏打ちの紙の白さによるものとのこと。

ゆるゆる描いているようで、裏では意外としっかり仕事をしっかりするタイプ。

それが与謝蕪村です。

 

ゆるゆるといえば、こんな作品もありました。

 

呉春画・与謝蕪村賛  《「よい夢の」画賛》  個人蔵

 

 

こちらは、与謝蕪村が賛を書き、

絵は、蕪村の弟子の呉春が描いたもの。

蝙蝠をモチーフにした作品は少なくないですが、

僕がこれまで目にした蝙蝠の絵の中では断トツ可愛かったです。

 

 

 

サンエックスの新キャラかと思いました。

グッズ化希望!

 

 

ゆるい絵を得意とする蕪村ですが、

「ゆるい=カワイイ」 と必ずしもならないのが、

蕪村の一筋縄ではいかないところです。

例えば、こちらの 《採薬図》

 

与謝蕪村 《採薬図》  個人蔵

 

 

ゆるいタッチではあるものの、

観れば観るほど、心がざわつく、

だんだん不安になってくる作品でした。

 

 

 

とりあえず、「こっちみんな!」 とだけ言いたいです。

 

 

ちなみに、 《採薬図》 以上に、

観れば観るほど不安に襲われたのが、

蕪村と呉春の師弟コンビによる 《白箸翁・元政身延詣図》 という一枚。

 

与謝蕪村・呉春  《白箸翁・元政身延詣図》  逸翁美術館蔵

 

 

右が蕪村で、左が呉春。

どっちもアクが強い、というか、エグ味が強いです。

 

 

 

『エルム街の悪夢』 のフレディくらいシワだらけ。

もはやホラーのたぐいでした。

 

 

最後に紹介したいのは、こちらの 《富岳列松図》。

 

重要文化財  与謝蕪村  《富岳列松図》  愛知県美術館蔵

 

 

白すぎる富士山が印象的な一枚です。

富士山もさることながら、それ以上に気になるのが、たくさんの松。

モブキャラのごとく、徒党を組んでいます。

「ここから先は俺たちを倒してから行きな!」

そう言っているようにも見えなくはありません。

左の方の松は、なぜか消滅しかかっていますね。

成仏寸前??

 

 

 


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