この春、東京都現代美術館では、
ライゾマティクス初となる大規模な個展、
“ライゾマティクス_マルティプレックス”が開催されています。
ビョークや野村萬斎、サカナクションらとのコラボレーションなど、
実験的なプロジェクトを多数行ってきた日本を代表するクリエイティブ集団。
それが、ライゾマティクス。
略して、ライゾマです。
もし、ライゾマの名にピンと来なくとも、
彼らが手掛けたPerfumeの紅白演出やMVや、
リオ五輪閉会式での東京大会プレゼンテーションの演出は目にしたことがあるはず。
(注:安部マリオはライゾマとは関係ありません)
そんなライゾマの設立15周年を記念して開催される今回の展覧会ですが。
出展作品は、オール新作となっています。
目玉作品の一つは何と言っても、
こちらの 《Rhizomatiks × ELEVENPLAY “multiplex”》。
高さ約7m、全長約27mの空間全体に、
プロジェクター15台を使って映像がプロジェクションされています。
その舞台を縦横無尽に動き回る5つの白い箱。
そして、ホイールの付いた黒いカメラが、絶えずその様子を撮影し続けます。
まるで意志を持っているかのように動く箱とカメラ。
それだけでも十分に驚かされるのですが。
実は、このカメラが撮影した映像は、
リアルタイムで手前に設置されたモニターに映し出されています。
そして、そのモニター上では、
あらかじめモーションデータ化されたダンサーの動きが合成されているのです。
・・・・・・・と、この説明だけで、作品の内容を、
ちゃんと伝えられた気は、まったくしないのですが。
壁一枚を挟んで、リアルな空間とバーチャルな空間が、
同時に存在しているということは、なんとなくお分かりいただけるでしょうか。
ちなみに、映像で踊っているダンサーたちは、
最近ちょっと話題の振付師MIKIKOさんが率いるダンスカンパニー「ELEVENPLAY」。
こんな素晴らしい才能を持った振付師が、ハシゴを外されてしまっただなんて。
ライゾマの技術で、なんとか無かったことにできないものでしょうか。
と、それはさておき。
《Rhizomatiks × ELEVENPLAY “multiplex”》 と同じくらい、
一度観始めたら、じーっと見入ってしまう作品がありました。
それは、ライゾマの代表作の一つで、
2011年に発表された 《particles》 のアップデート版。
その名も、《particles 2021》 です。
東京都現代美術館の吹き抜け空間に、
8の字型で螺旋が連なる構造の巨大なレールが設置されています。
このレール上を転がる多数のボール。
そのボールの位置を正確にトラッキングし、
レーザー照射することで、独創的かつ立体的な視覚表現を実現した作品です。
・・・・・・・・・・。
正直、我ながら何を言ってるかちょっとわからないので、
こちらの作品に関しましては、実際に観て頂けましたら。
決して、損はさせませんので。
動き自体はシンプルなのですが、
まったく飽きることなく、ひたすら観てられる作品です。
展覧会には、他にもさまざまな作品が展示されていましたが。
個人的に一番興味を惹かれたのは、
これまでにライゾマが制作したデバイスの実物を紹介するコーナーです。
完成した作品があまりにもカッコよく、スマートな印象のため、
なんとなくCGでちゃちゃっと作っているかのようなイメージを勝手に抱いていたのですが。
実は、何度もトライ&エラーしながら、
こうした基盤やデバイスを制作し、作品を生み出していたのですね。
なお、こちらの網戸みたいなアイテムは・・・・・・
2015年の紅白でのPerfumeのパフォーマンスでも使われたスクリーンなのだとか。
ハイテクでクールに見えるも、
意外と手作業感たっぷりのアイテムでした。
優雅に泳いでいるように見える白鳥は、
その水面下でバタバタ足を動かしていると言いますが。
ライゾマもまさにそれ。
いい意味で、ライゾマのイメージが変わる展覧会でした。
ちなみに。
この展覧会は、リアルだけでなく。
オンラインでも開催されるのだとか。
リアルとバーチャル、両方の世界で楽しめる展覧会です。