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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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クールベと海 展

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現在、パナソニック汐留美術館で開催されているのは、

“クールベと海 展―フランス近代 自然へのまなざし” という展覧会です。

 

(注:記事に使用している画像は、パナソニック汐留美術館より特別に提供いただいたものです。撮影:ミカワカメラ)

 

 

美術史上に燦然と輝くパワーワード・・・・・

 

「私は天使を描けない。

 なぜなら見たことがないからだ!」 

 

を言い放ったことで知られるフランスの画家ギュスターヴ・クールベ。

写実画家を代表する画家として、

「ありのままの姿描くのよ」 とばかりに、

あえて美化することない風景画をその生涯で数多く描きました。

 

ギュスターヴ・クールベ 《フランシュ=コンテの谷、オルナン付近》 1865年頃 油彩・カンヴァス 茨城県近代美術館

 

 

そんな彼がとりわけ多く描いた風景が、海。

クールベが活動していた当時、海洋国イギリスを中心に、

ピクチャレスク (=ざっくり言えば、絵になる風景) なものとして、

そして、崇高なものとして、海景が描かれるようになりました。

 

しかし、どうやらクールベ的には、

「海=崇高なもの」 ではなかったようで。

というのも、山に囲まれた地で生まれ育ったクールベ。

22歳にして初めて海を見た際に、両親への手紙にこんな感想を綴っています。

 

「ついに海を見た。

 地平線のない海を。

 それはとても奇妙なものであった。」 

 

 

今でこそ、例え、海なし県に生まれたとしても、

本やテレビ、インターネットなどで海景を目にする機会は多々ありますが。

この時代は、海をまったく見たことが無いという人も少なくありません。

そんな人が、初めて海を見たのならば、

それは確かに奇妙なものに感じたはずです。

そういう視点で、改めてクールベが描いた海の絵を観てみると・・・・・

 

ギュスターヴ・クールベ 《波》 1869年 油彩・カンヴァス 愛媛県美術館

 

 

途端に奇妙な光景に思えてきました。

ジーッと見つめていたら、画面上に、

あの奇妙な漫画の  「ゴゴゴゴゴゴゴ」 という擬音が浮かび上がってきそうです。

 

 

 

さてさて、会場にはそんなクールベが描いた海の絵が集結。

国内の美術館が所蔵する作品だけでなく、

クールベの地元フランスの美術館が所蔵する作品も、

この展覧会のために、海を渡って来日を果たしています。

 

ギュスターヴ・クールベ 《波》 1870年 油彩・カンヴァス オルレアン美術館 © 2020 Musée des Beaux-Arts, Orléans

 

 

また、今展では、クールベの海の絵と比較するべく、

モネやカイユボットといった他のフランスの画家の海の絵も併せて展示されています。

 

クロード・モネ 《アヴァルの門》 1886年 油彩・カンヴァス 島根県立美術館

 

 

 

どの海の絵も穏やかな雰囲気で、

奇妙な印象は一切受けませんでした。

なるほど。

比べてみることで、クールベの海の絵が、

いかに個性的なのかが際立っていたように思えます。

 

 

ちなみに。

海に関連して、会場ではこんなものも展示されていました。

 

 

 

お嬢様学校の制服のように見えますが、

実はこれらは19世紀中頃の水着とのこと。

当時はまだ女性が肌を露出するのが一般的ではなかったそうで、

この水着を着用した上で、さらに膝下を隠すべく靴下も履いていたのだとか。

もちろんポリエステルもポリウレタンもないので、素材はコットン製。

海に入った瞬間、がベタっと体に張り付いてしまうことでしょう。

 

とはいえ、この当時の海水浴は、

泳ぐよりも、砂浜で佇むのがポピュラーだったそう。

 

ウジェーヌ・ブーダン 《浜辺にて》 油彩・カンヴァス 個人蔵

 

 

見るからに泳ぐ気が無い人が、こんなにも砂浜にいたのなら、

あの水着を着て海で泳ぐ人間は、彼らの注目を集めることは必至。

泳ぐ奴の気が知れません。

 

 

ちなみに。

実はこの展覧会はすでに、

昨年山梨県立美術館で開催されております。

 

 

 

出展作品は大きく変わっていませんが。

クールベ以外の画家が描いた海の絵から始まり、

クールベが描いた海の絵、クールベが描いた地元の山の絵、

そして、クールベが描いた狩猟画で締めた山梨での展示とは違って。

パナソニック汐留美術館のほうでは、

クールベが描いた地元の山の絵、狩猟画の紹介からの・・・・・

 

 

 

クールベ以外の画家が描いた海の絵。

そして、クールベが描いた海の絵がラストを飾る構成となっていました。

テーマが 「クールベと海」 だけに。

個人的には、美味しいものを最後に持ってきた、

パナソニック汐留美術館の構成のほうがしっくりときました。

星星

 

ただ、クールベのどの海の絵も、

基本的には、波がザッパーンとしているため、

ついつい東映のオープニングを連想してしまいました。

展覧会の始まりなのか、エンディングなのか。

ちょっとややこしかったです (笑)

 

 

 ┃会期:2021年4月10日(土)~6月13日(日)
 ┃会場:パナソニック汐留美術館
 ┃https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/21/210410/

 


~読者の皆様へのプレゼント~
“クールベと海 展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、4月28日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。





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