■ある画家の数奇な運命
監督・脚本:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
出演:トム・シリング、セバスチャン・コッホ、パウラ・ベーア
2018年製作/189分/R15+/ドイツ
現代美術界の巨匠ゲルハルト・リヒターをモデルに、
ドイツの激動の時代を生きた芸術家の半生を描いた人間ドラマ。
ナチ党政権下のドイツ。
叔母の影響で幼い頃から芸術に親しむ日々を送っていたクルトは、
終戦後に東ドイツの美術学校に進学し、エリーと恋に落ちる。
エリーの父親は、精神のバランスを崩して強制入院し、
安楽死政策によって命を奪われた叔母を死に追いやったナチ党の元高官だった。
しかし、誰もそのことに気づかぬまま、2人は結婚する。
やがて、東のアート界に疑問を抱いたクルトは、
エリーと西ドイツへ逃亡し、創作に没頭するが……。
(映画.comより)
「オークションに作品が出品されるたびに、
ン十億円で落札されるゲルハルト・リヒター。
一昨年末のサザビーズ香港に出品された際は、約30億円で落札され、
アジアのオークションに出品された西洋作家の作品の中で最高落札額だと話題になりました。
ちなみに、落札したのはポーラ美術館だったことが後に判明し、さらに話題になりました。
なぜ、リヒターは、そんなに人気なのか?
どうやって、世界最高峰の画家の地位を築いたのか?
その秘密が明らかになる映画なのかと思いきや・・・・・そうではありませんでした。
上映時間が3時間以上もあったのに!!
映画で描かれていたのは、
学生時代の若きリヒターが、自分なりの絵画を見つけるまでの姿。
美術学校の友人との交流や、
カリスマ性の強い教授からのアドバイスなども描かれ、
まるで、ドイツ版の 『ブルーピリオド』 を観てるような感じでした。
画家として注目を浴びる、ちょうどそのタイミングで、映画は終了。
画家リヒターの人生は、続編があって、そこで描かれるのでしょうか。
なんとも尻切れトンボな印象でした。
ちなみに、そのカリスマ的教授のモデルとなっているのは、明らかにヨーゼフ・ボイス。
(劇中では、アントニウス・ファン・フェルテンという名前)
役者さんは、わりと、ボイス本人に似てましたが、
何回かに1回は、笹野高史さんに見えてしまうのが玉に瑕でした (←?)
さて、映画のタイトルにある “数奇な運命” とは何なのか。
それは、リヒターの (最初の) 妻の父親が、
実は、リヒターに大きな影響を与えた叔母を殺した張本人だったという衝撃的な事実です。
本当なのかと、念のため、調べてみたところ、
どうやら映画をドラマチックにするために、事実はだいぶ盛られている模様。
ただ、近からずも遠からずな事実はあったようです。
映画の中でのウェイトとしては、
“画家リヒターが誕生するまで” よりも、
“リヒターの義父の知られざる過去” のが上。
映画開始45分までは、リヒターは登場しませんでした。
(幼い頃のリヒターは登場しますが)
それゆえ、美術映画というよりも、
運命の歯車に翻弄された一家のドキュメントといった印象。
『ブルーピリオド』 感もありましたが、
全体的には、 『奇跡体験!アンビリバボー』 を観てるような感じでした。
案内役のビートたけしのシーンが途中で挟まっても全く違和感なかったはず。
(星2.5つ)」
~映画に登場する (作品の元になった) 名画~
《叔母マリアンヌ》