今月中旬、ポーラ美術館では、
“フジタ-色彩の旅” が開幕しましたが。
それと同時に、“モネ-光のなかに” も開幕いたしました。
古今東西の名品を所蔵するポーラ美術館。
そのコレクションの中でも特に白眉なのが、モネのコレクション。
所蔵数は、実に19点。
この数は、国内最多を誇っています。
そんなポーラ美術館を代表するモネコレクションのうち11点を、
約1年にわたって、常設しようというのが、今回の “モネ-光のなかに”。
しかも、いつものポーラ美術館の展示空間ではなく、
気鋭の建築家・中山英之さんが設計を手掛けた特別な空間で展示されています。
まず何よりも特徴的なのが、すべての展示壁が曲面となっていること。
マルモッタン美術館を意識したのかと思いきや、
展示ケース内にはめ込まれたガラスに人や景色が映らないための配慮なのだとか。
それゆえ、作品の向かいには、必ずこのような壁が設置されています。
棚のように見えますが、棚にあらず。
これが、反射を最大限に防ぐための形状なのだそうです。
ちなみに。
会場の展示壁に使われているのは、トタン板とのこと。
それも、市販されているもっともポピュラーなトタン板とのこと。
色も、あえて一番ポピュラーな ‘うぐいす’ を使用したそうです。
というわけで、壁はわりと安上がりに仕上がったそうですが。
その代わりと言っては何ですが (?)、
会場の床には、お金が掛かっているようです。
なんと全面に絨毯が敷かれています。
それも、トタン板のうぐいす色に合わせた特注品なのだそう。
高級な絨毯らしく、足元はめっちゃフカフカ。
まるで草原を歩いているかのような感覚でした。
モネの 《睡蓮の池》 とも見事にマッチしています。
そして、この展示空間の最大のポイント、
それは壁や床ではなく、実は天井にあります。
この展示空間は、全体が繭のようなテントで覆われているのです。
なお、天井には一つも照明がありません。
照明が設置されているのは、壁の上部。
その照明の光が天井のテント膜に当たり、
バウンドした光が会場全体を包むように設計されているのだそう。
確かに、言われてみれば、床には鑑賞者の影は一つもありませんでした。
まるで光を閉じ込めたような、
光に満ちたモネの絵画を、光に包まれた空間で鑑賞する。
これまでにない新感覚の鑑賞体験でした。
約1年と言わず、むしろその先もずっとこの展示空間でいいくらいです。
また、新感覚といえば、この展示に合わせて、
若手作曲家のニコ・ミューリーが選曲したというSpotifyのプレイリストも。
展覧会と連動した動画は、よくありますが。
展覧会と連動したプレイリストは、
日本の美術館では、おそらく初めてなのでは?
選曲された音楽を聴きながら、
モネの作品と向き合うのもまた、新感覚の鑑賞体験でした。
ちなみに。
アトリウム ギャラリーとカフェチューンのそばで、
やはり同じ日から、新たな展示がスタートしています。
その名も、“岡田杏里 土の中で夢をみる”。
岡田杏里さんは、日本とメキシコを拠点に活動するアーティスト。
壁画の本場メキシコで活動しているだけに、
これまで数々の壁画を制作しているそうです。
今展の目玉となるのは、33点の絵画からなるインスタレーション作品。
1点1点はそれぞれ独立していますが、
全体的に観れば、一つの巨大な壁画となるそうです。
赤や黄色といったビビッドな色は、そこまで多用されていないのに、
グワッと迫ってくるものがある、力強くパワフルな印象の作品でした。
なお、岡田さんは、蛇をよくモチーフにするとのことで。
ポーラ美術館のエスカレーターが、
岡田さんによる蛇仕様となっていました。
エスカレーターを上がる時、
もれなく蛇に飲み込まれるような気分が味わえます。
蛇が苦手な方は、お気を付け下さいませ。