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江戸の敗者たち

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“江戸の悪” やら、“江戸の凸凹” やら、 “江戸の女装と男装” やら。

これまでに、さまざまな “江戸の○○” を開催してきた太田記念美術館。

その “江戸の〇〇” シリーズ最新作となるのが、こちら↓

 

image

 

 

4月15日に開幕した “江戸の敗者たち” です。

(注:緊急事態宣言の発令を受けた政府・東京都からの要請をふまえ、

 2021年4月25日から5月11日の予定で臨時休館しています。その後の予定については、美術館ウェブサイトで改めて)

 

タイトルには、“江戸の” とありますが、

これは、あくまで 「江戸時代に制作された浮世絵の」 的なニュアンスで、

江戸時代に限定せず、判官びいきの語源となった源義経や、

 

 

 

三日天下の語源となった明智光秀など、

 

 

 

日本史上の敗者たちが描かれた浮世絵の数々が紹介されています。

また、最終的には負け確定の歌舞伎の悪役や、

勝負事を描いた浮世絵なども紹介されていました。

勝者の影に敗者あり。

「負けの美学」 を感じる展覧会です。

星

 

 

出展されていた作品の中で印象的なものをいくつかご紹介いたしましょう。

まずは、小林清親の 《菅公配所之図》 から。

 

 

 

描かれているのは、権力争いに負け、

大宰府に左遷されてしまった菅原道真です。

・・・・・と、そんなことよりも何よりも。

右側の木が気になって仕方がありません。

根っこ、どないなっとんねん。

おそらく、歩けます。

 

 

続いては、歌川芳虎の 《楠正成熱湯を濯せて三十余万騎の大群を悩す》

 

 

 

籠城する楠正成軍が、幕府軍相手に奮闘する場面が描かれています。

石垣を登ろうとする幕府軍を、熱湯で撃退しているのだそう。

 

 

 

熱湯の量に対して、桶小さくない?

もしかしたら、無限に熱湯が溢れ出す魔法の桶なのかも。

 

 

そんな楠正成の息子・楠正行 (まさつら) の最期を描いた浮世絵がこちら。

 

 

 

歌川芳艶による 《楠正行討死之図》 です。

矢、多すぎ。

チャン・イーモウ監督映画ばりの矢の量です。

いくらなんでも避けられる気がしません。

 

 

さてさて、展覧会には、江戸だけでなく、

明治時代や大正時代の浮世絵 ・新版画も紹介されています。

こちらは、大正時代に制作された名取春仙の 《初代中村吉右衛門の馬だらひ光秀》 です。

 

 

 

明智光秀が森蘭丸に鉄扇で額を打ち付けられた場面を描いたもの。

今にも怒り出しそうというか、今にも泣き出しそう。

「叩いたね!親父にもぶたれたことないのに!」

そんな心の声がダダ洩れです。

 

『麒麟がくる』 つながりで、もう一枚ご紹介いたしましょう。

歌川国芳の 《太平記英雄伝 十八 松永大勝久英》 です。

 

 

 

描かれているのは、吉田鋼太郎が演じた松永久秀。

(注:この浮世絵では、あえて松永久英と表記されています)

愛蔵する天下の名釜・平蜘蛛とともに自害する場面なのですが。

茶釜って、こんな感じに割れるものなのでしょうか?

それが気になりすぎて、絵の内容が入ってきませんでした。

 

 

最後に紹介したいのは、落合芳幾の 《善悪思の案内》 です。

 

 


遊郭の甘い誘惑に心を迷わせる男性。
“行っちゃおうかなぁ?”

“いや、ダメダメ!今日という今日は絶対に行かないゾ!”
彼の心の中の天使と悪魔ならぬ、善と悪が戦っています。
しかし、悲しいかな。
善に比べて、悪のほうが圧倒的に数が多い!

 



数的不利で、善の負けは確定的。

しかも、この善にいたっては・・・・・

 




団子2本で悪になびきそうな気配です。

どんだけ意志弱いねん。





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