現在、東京ステーションギャラリーでは、
“コレクター福富太郎の眼 昭和のキャバレー王が愛した絵画” が開催されています。
(注:緊急事態宣言の発令を受け、4月27日から臨時休館しています。再開時期は未定)
全国にキャバレーを展開し、
「昭和のキャバレー王」 の異名をとった福富太郎。
そんな彼は日本有数の実業家であり、
また、日本有数の美術コレクターでもありました。
そのコレクションの質は高く、彼が蒐集した作品が、
展覧会の目玉作品となることは、少なくありません。
例えば、ポーラ美術館で一昨年前に開催された展覧会、
“モダン美人誕生” の目玉作品だった岡田三郎助の 《ダイヤモンドの女》 も、
岡田三郎助 《ダイヤモンドの女》 1908年 福富太郎コレクション資料室
東京国立近代美術館で開催中の “あやしい絵” の前期の出展作、北野恒富の 《道行》 も、
北野恒富 《道行》 1913年頃 福富太郎コレクション資料室
実は福富太郎コレクション。
展覧会を訪れて、気になる作品と出会った時、キャプションに目をやると、
そこに 「福富太郎コレクション資料室」 と記載されていることはよくあります。
そんな福富太郎コレクションですが、
意外や意外、美人画というテーマ以外で、
これまでまとまった形で展覧会が開催されたことがなかったのだとか。
つまり、今展は、コレクション全体に焦点を当てた初めての、
かつ、美人画も久しぶりにたっぷりと楽しめる展覧会なのです。
会場には、福富太郎コレクションの中から、
選りすぐられた傑作の数々が大集結しています。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
特に美人画を多く蒐集していたこともあり、
東京ステーションギャラリーの会場内は、いつになく華やかな印象に。
たくさんの美女に囲まれて、まさにキャバレー状態でした。
(注:キャバレーに行ったことはないので、あくまでイメージですが)
さてさて、評価が定まった高額の作品を購入するようなコレクターとは違って、
たとえ評価が定まっていなくても、自身の眼で気に入った作品を蒐集していたという福富太郎。
そのコレクションの中には、ここ近年、
再評価が高まっている渡辺省亭や小村雪岱の作品も含まれています。
また、2018年に富山で講演したこともあり、
個人的に思い入れの強い尾竹竹坡の作品もありました。
さらには、富岡永洗や島崎柳塢、鳥居言人などなど、
‘はじめまして’ な画家たちの作品も多数出展されています。
知名度こそないですが、どの画家も実力は確か。
福富太郎のお眼鏡にかなっただけはあります。
この中の誰かが、ネクストブレイク候補かもしれません。
そんな ‘はじめまして’ な画家たちの中で、
個人的に一番惹かれたのは、松浦舞雪なる人物。
阿波踊りをする女性たちを描いた 《踊り》 という作品に一目惚れしました。
動きが見えるわ。音が聴こえるわ。
あまりにも素晴らしすぎて、
しばらく立ち止まって、見惚れてしまいました。
その隣に、上村松園の絵が展示されていましたが、
珍しく、松園の美人画が霞んで見えてしまったほどです。
なお、福富太郎がもっとも積極的に蒐めたのは、
幼いころから憧れだったという鏑木清方だったそう。
鏑木清方の作品群は、福富太郎コレクションの中核をなしており、
今展には、代表作の 《薄雪》 や 《妖魚》 をはじめ、13点が出展されていました。
右を観ても清方。左を観ても清方。
女性の匂いまで伝わってくるような、実に濃厚で濃密な空間でした。
この空間を体験するだけでも、
展覧会を訪れる価値は十分にアリです。
ちなみに。
日本画のコレクションというイメージの強い福富太郎コレクションですが、
岸田劉生や村山槐多、佐伯祐三といった洋画の名品も多く含まれています。
気になる洋画作品もいろいろありましたが。
やはり一番印象に残っているのは、
鹿子木孟郎の 《娘》 (写真左)でしょうか。
美人揃いの展覧会だっただけに、
逆に目立っていたといいましょうか。。。
石倉三郎に見えて仕方ありませんでした。
┃会期:2021年4月24日(土)~6月27日(日) ※緊急事態宣言の発出に伴い休館中
┃会場: 東京ステーションギャラリー
┃http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/202104_fukutomi.html
┃事前チケット購入制 (詳しくは、美術館HPをご確認ください)
~読者の皆様へのプレゼント~
“福富太郎コレクション展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、5月18日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。