注:この取材は緊急事態宣言が発出される前に行いました。
信州・長野を代表する名刹、善光寺。
そのすぐそばにある城山公園内に、
1966年に開館したのが長野県信濃美術館です。
施設の老朽化を理由に、2017年10月より休館をしていましたが、
先月10日、名前も長野県立美術館と一新し、新築オープンしました。
新たな建物を設計したのは、宮崎浩さん。
そのコンセプトは、「ランドスケープ・ミュージアム」 とのこと。
建物が周囲のランドスケープと溶け込むように設計されているのが大きな特徴です。
具体的にいえば、地上3階建ての建物なのですが、
隣接する道路の高低差を巧く活かし、1階から3階まで、
どの階からも美術館に入れるようになっています。
1階から入る場合は、公園を通って。
3階から入る場合は、道路を上がり切ったところから。
ちなみに。
3階部分は、「風テラス」 と名付けられた屋上広場となっており・・・・・
その先には、善光寺の本堂が見えます。
また、この広場では、隣接されたカフェの飲食を楽しむことも、
さらには、不定期に開催されるイベントも楽しむこともできるそう。
広さ。眺め。空気感。
すべてが最高で、実に気持ちのいい空間でした。
しかも、このスペースに限らず、長野県立美術館は、
展示室以外は無料で誰でも入ることが可能となっています。
そのオープンな姿勢も含めて、気持ちのいい空間といえましょう。
さてさて、今回のリニューアルオープンに伴って、
建物や美術館名、美術館ロゴも新しくなりました。
幾何学模様のように見えるかもしれませんが、
半分に折ってみると、ご覧の通り、アルファベット3文字が現れます。
そう。Nagano Prefectural Museum of artの頭文字を取って、NAMです。
長野県立美術館には、本館に併設して、
1990年に開館した東山魁夷館があります。
(2019年に一足先にリニューアルオープン済)
設計は、法隆寺宝物館や豊田市美術館など、
数多くの美術館建築を手掛けてきた谷口吉生さん。
この東山魁夷館の所蔵品の中でも、
特に人気が高いのが、アクオスのCMでもわだいとなった 《緑響く》 です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
この 《緑響く》 の湖面に景色が映り込んだイメージが、
長野県立美術館の新ロゴには反映されているのだそう。
そういえば、ロゴの色も、《緑響く》 カラーですね。
さて、そんな長野県立美術館の新建築完成記念として開催されているのが、
“未来につなぐ~新美術館でよみがえる世界の至宝 東京藝術大学スーパークローン文化財”。
東京藝術大学が最新のデジタル技術を駆使し、
文化財を細密に復元した 「スーパークローン文化財」 を紹介する展覧会です。
会場では、法隆寺金堂の 《釈迦三尊像》 のオリジナルの姿を再現したものや、
現在の姿を再現したもの、
アフガニスタンのバーミヤンや
中国の敦煌などの仏教美術のクローン文化財が紹介されていました。
あれ?これってどこかで見たような・・・とデジャヴを感じていたら、
2017年に東京藝術大学大学美術館で、
ほぼ同じような内容の展覧会を観ていましたっけ。
決してクローン文化財が悪いというわけではないのですが、
新築オープン記念が、この展覧会でなくてもよかったような。
なんとなく、しっくりきませんでした (笑)
せっかく素敵にリニューアルしただけに!
なお、展覧会鑑賞後、館内でこんなチラシを見つけてしまいました。
どうやら8月28日より、グランドオープン記念展がスタートする模様。
いや、どう考えても、こっちのが見ごたえあるに決まっています!
リニューアルオープンよりも、グランドオープン。
長野県立美術館を訪れようと考えている他県の方は、
グランドオープン記念展まで待った方が良いかもしれません。
その頃には、きっとコロナも落ち着いているでしょうし。
ちなみに。
本館と東山魁夷館を結ぶ空中ブリッジの下には、
「水辺テラス」 と名付けられたスペースがありました。
この場所には、ランドスケープ・ミュージアムを象徴する作品として、
中谷芙二子さんが美術館のために制作した霧の彫刻作品が常設されています。
1日8回、決まった時間になると、霧が発生するとのこと。
霧は15分間発生し続けます。
気象条件がそろえば、公園エリアまで霧が広がるそうですよ。
なお、こちらのエリアも無料で見ることができます。
いきなり発生した霧に、周囲にいた人たちが、
「なんだなんだ?」 と引き込まれるように集まってきました。
その中には、おそらく善光寺で参拝した流れで、
美術館にやってきたと思われるおばあさんの姿も。
噴射口から発生する霧を一生懸命頭に浴びていました。
おばあさん。それ、お線香の煙じゃないですよ。