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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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「エキシビジョン・カッティングス」 マチュウ・コプランによる展覧会

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銀座メゾンエルメス フォーラムで、この春開催されているのは、

“「エキシビジョン・カッティングス」 マチュウ・コプランによる展覧会”

ロンドンを拠点に活動する気鋭のキュレーター、

マチュウ・コプランが日本で初めて手掛ける展覧会です。

 

 

 

会場は大きく2つに分けられています。

まずはじめに展開されていたのは、

《育まれる展覧会》 と名付けられた空間です。

 

 

 

展覧会タイトルの “カッティングス” には、

「挿し木・接ぎ木」 という意味があるのだそう。

それゆえ、空間のあちらこちらに、

アーティストの西原尚さんらによって、

接ぎ木をイメージして制作されたベンチが設置されていました。

 

 

 

また、ベンチと同じく、あちらこちらに設置されたスピーカーからは・・・・・

 

 

 

ミニマルュージックの鬼才フィル・ニブロックが、

この展覧会のために書き下ろした音楽が流れています。

全6曲がループ再生されているとのことでしたが、

鬼才の作曲した楽曲ゆえ、どれも同じように聴こえました。

というか、曲というよりも、ただのモーター音だったような。

さすが鬼才。

 

ちなみに。

空間の中心に置かれていたプランターには、

『わら一本の革命』 という著書で知られる農学者・福岡正信の想いを受け継ぐ、

福岡正信自然農園から届けられた土で満たされています。

 

 

 

会期中、この土の中で、甘夏の苗を育てるのだそう。

なるほど。だから、《育まれる展覧会》 なのですね。

会期最終日の7月18日に、

どれほどまでに育まれているのか気になるところです。

 

 

さてさて、もう一つの展示空間では、

まずはスイス生まれのフィリップ・デクローザによるミニマルな絵画がお出迎え。

 

 

 

そして、その先では、ドキュメンタリー映像作品、

《The Anti-Museum: An Anti-Documentary》 が上映されています。

 

 

 

こちらは、、コプランが2016年に単独でキュレートした展覧会、

“A Retrospective of Closed Exhibitions(閉鎖された展覧会の回顧展)” を映像化したもの。

“閉鎖された展覧会の回顧展” とは、その名の通り、

アーティストによってギャラリーが閉鎖された古今東西の展覧会を紹介したものです。

その一つの例として、高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之によって結成された、

前衛芸術グループ、ハイレッド・センターによる 《大パノラマ展》 も紹介されていました。

 

 

 

《大パノラマ展》 とは、かつて新橋にあった内科画廊で開催された伝説の展覧会です。

会期初日に画廊をハンマーと釘を使って扉を完全に閉鎖。

会期中、会場内に誰も入れないようにした展覧会です。

 

このように画廊を閉鎖する例は、

世界を見渡してみれば、実はそう少なくないようで。

映像で紹介されていた中で個人的に一番興味深く感じたのは、

アルゼンチンの女性芸術家グラシエラ・カルネヴァーレによる作品です。

 

ポスターでガラス面が埋め尽くされ、

内部が見えないようになっていた展示室。

そこに人々が入ったところを見計らい、展示室に鍵をかける彼女。

そう、彼女は、あろうことは人々を展示室に閉じ込めたのだとか。

慌てた内部の人々は、ポスターを剥がし、

外にいる人たちに自分たちが閉じ込められた姿を見せました。

 

 

 

こうして、ギャラリーの内と外にいる人々は、

強制的に、非日常的な体験をすることとなったのです。

ちなみに、最終的には、閉じ込められてから4時間後、

通行人がガラスを割ったことで、内部の人たちは脱出できたのだとか。

めでたしめでたし・・・・・・・・なのか?

 

《The Anti-Museum: An Anti-Documentary》 の上映時間は30分ちょっと。

分数だけ見ると、映像作品としては長いような気がしますが、

しっかり作り込まれていたので、意外と最後まで飽きずに見入ってしまいました。

ただし・・・・・・・・。

 

 

 

エンドロール、長っ!!

 

我慢して (?) 、最後まで付き合いましたが、

ただただ無駄にエンドロールが長いだけでした。

 

 

ちなみに。

「閉鎖された展覧会」 がキーワードのこの展覧会は、

4月25日から緊急事態宣言により閉鎖されていました。

そして、5月16日より再開したと思ったのも束の間、

5月23日より再び、当面の間閉鎖されてしまうようです。

この展覧会そのものが 「閉鎖された展覧会」 の1つになるとは。

なんたる皮肉。

それも含めてマチュウ・コプランによる演出なのかもしれません。





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