現在、ホキ美術館で開催されているのは、
“STORIES―永遠の人物画展” という展覧会。
タイトルずばり、人物画にスポットを当てた展覧会です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
ホキ美術館コレクションの中でも屈指の人気を誇る生島浩さんの 《5:55》 を筆頭に、
生島浩 《5:55》 2007-2010年 ホキ美術館
ホキ美術館コレクションの中核をなす森本草介さんの作品群、
森本草介 《未来》 2011年 ホキ美術館
そして、写実絵画界の “生ける伝説” 野田弘志さんの作品などが公開されています。
野田弘志 《聖なるものTHE-Ⅰ》 2009年 ホキ美術館
人物画は、ホキ美術館コレクションの中で最も多くを占めるジャンル。
そういう意味では、今回の展覧会は、
ホキ美術館のベストコレクション展といっても過言ではないでしょう。
とはいえ、ただのベストコレクション展にはあらず。
初披露となる新作も出展されています。
その一つが、石黒賢一郎さんの 《INJECTION DEVICEの使用》。
石黒賢一郎 《INJECTION DEVICEの使用》 2020年 ホキ美術館
こちらは、石黒さんが近年取り組んでいる 「Injection Device」 シリーズの最新作です。
「Injection Device」 シリーズとは、2047年に起きたウイルステロの戦争を生き抜く科学者と、
その娘で首にインジェクションデバイスを装着したユウキのSFチックな物語を描く作品シリーズ。
この物語には、こんな設定があります。
「ユウキは首に装着した“Injection Device” から、定期的にワクチンを注入し続けている。
そして、その副作用として驚異的な力を手に入れた。」
2017年に初めてその設定を聞いた時には、
“SFだなァ~” とファンタジーのように感じていたのですが。
まさか、2047年を待たずして、
ウイルスやワクチン、副作用という単語が日常化するとは。
石黒さんの慧眼には、感服せざるを得ません。
そして、もう一つの初公開作品は、小尾修さんによる 《止まり木》。
小尾修 《止まり木》 2021年 ホキ美術館
モデルの女性の身体の傾け具合とか。
手と足の指の複雑な絡まり具合とか。
構図や色調とか。
すべてのバランスが絶妙です。
背後の壁に荒々しく塗られた白いペンキが、
まるで女性に生えた翼のように見えるのが印象的でした。
あと、篠原涼子さんに見えるのも印象的。
それも、イブクイックのCMの。
さてさて、今回出展されていた作品の中で、
他に印象的だったのは、五味文彦さんの 《帽子の女》 です。
五味文彦 《帽子の女》 2019年 ホキ美術館
節目がちな表情が、なんとも意味ありげ。
怒りか悲しみを懸命に抑えているようにも見えます。
デリカシーのない男に、「その帽子、似合ってなくね?」 とでも言われたのかも。
それと、もう一つ印象的だったのが、島村信之さんのこちらの作品。
島村さんの穏やかな画風のせいで、
一瞬スルーしてしまいそうになりましたが。
よくよく見ると、寝相がそんなによろしくないような。
もちろん、絵としてのバランスは良いのですが。
あと、ベッドはただのベッドでなく、パラマウントベッドのようですね。
ちなみに。
ホキ美術館に関連しまして。
『そろそろ美術の話を…』 の最新回に、
人気写実画家の塩谷亮さんにゲスト出演頂きました。
写実絵画についての見解や、ホキ美術館に対する想い、
意外な音楽の趣味、学生時代の苦労話など、貴重なお話がたくさん飛び出しました。
この放送を聴くと、塩谷さんの絵画がより深く感じられるはずですよ。
塩谷亮 《相韻》 2018年 ホキ美術館
最後に。
前回のホキ美術館の記事で、ホキ美術館の新商品である、
島村さんのカブトムシとクワガタムシの絵がプリントされたマシュマロを、
「誰が買うねんwww」 的なニュアンスで紹介しましたが。
好評につき、欠品していました。
どうやら森本さんの花の絵のほうよりも人気があるとのこと。
売れるわけないと決めつけた偏向報道。
大変申し訳ありませんでした。
この場を借りて深く謝罪いたします。