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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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鏑木清方と鰭崎英朋 近代文学を彩る口絵

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現在、太田記念美術館では、

“鏑木清方と鰭崎英朋 近代文学を彩る口絵” が開催されています。

実はこの展覧会は昨年にも開催されていたのですが、

会期中盤にして緊急事態宣言が発令されてしまったため、

再開を待たずに、そのまま終了してしまいました。

そんな幻の展覧会が、1年越しに復活!

昨年訪れることができず、

悔しい思いをした皆様、リベンジするチャンスですよ。

 

 

さて、こちらは、美人画の名手として知られる日本画家・鏑木清方と、

友人でもあり、ライバルでもあった挿絵界のスーパースター・鰭崎英朋、

そんな2人が手掛けた木版口絵の数々を紹介する展覧会です。

 

木版口絵とは、明治20年代後半から大正初期にかけて、

文芸雑誌や小説の単行本の巻頭に添えられた木版による口絵のこと。

浮世絵の系譜に連なるものではあるものの、

これまでの浮世絵研究ではほとんど顧みられることがなかったそうです。

事実、今展で紹介されている木版口絵はすべて、

太田記念美術館の所蔵品ではなく、木版口絵コレクター・朝日智雄氏の所蔵品でした。

 

しかし、浮世絵の研究者がスルーしてきたからといって、

木版口絵が浮世絵よりも劣っているというわけではありません。

むしろ、その逆!

彫りや摺りの技術は、むしろ江戸時代よりも進化を遂げています。

 

鰭崎英朋 「有明」(『新婦人』明治45年5月号 口絵)

 

 

言われてみないと、

そして、意識してみないと、

木版とは到底思えないレベル。

パッと見は、直筆されているようにしか思えません。

描かれた女性の美しさはもちろんのこと、

木版口絵そのものの美しさに、うっとりさせられる展覧会でした。

星

 

 

さてさて、同じ美人画とは言っても、

鏑木清方と鰭崎英朋では、作風は大違いです。

大人の事情で清方の作品は掲載できないので、

是非、展覧会のHPなどで見比べて頂くとしまして。

清方が描く美人が、キレイ系であるのに対し、

英朋が描く美人は、瞳がバッチリとしたカワイイ系。

 

鰭崎英朋 柳川春葉・著『誓 前編』口絵

 

 

一昔前の 『CanCam』 に例えるならば (←?)、

清方が押切もえ系、英朋が蛯原友里系といったところでしょうか。

 

ちなみに、この木版口絵の美人画の出来が、

雑誌や小説の売り上げにも大きく影響を与えていたそう。

今でも多くの漫画雑誌が、その巻頭に、

漫画ではなく、女性のグラビアを掲載していますが、

案外、この木版口絵の美人画がそのルーツなのかもしれませんね。

 

 

なお、タイトルこそ、“鏑木清方と鰭崎英朋” ですが、

展覧会では、尾崎紅葉の 『金色夜叉』 の挿絵も手掛けた武内桂舟や、

 

武内桂舟 尾崎紅葉・著『隣の女』口絵

 

 

小林古径や奥村土牛、前田青邨らを輩出した梶田半古など、

 

梶田半古 五来素川・訳『未だ見ぬ親』口絵

 

 

清方と英朋が登場する以前に人気を誇っていた4人の絵師も紹介されています。

その中には、清方の師匠である水野年方の作品も。

さすが、清方の師匠だけあって、

落ち着きのある美人画が多かったですが。

1点だけ毛色がだいぶ違う作品がありました。

それは、『百物語』 の一場面を描いた一枚。

訪れた家の家主から、奥二階は覗かないよう、

言い渡された立川善馬なる男は、好奇心からつい奥二階へ足を運んでしまいます。

そこにいたのは家主の娘、お由。

お由は恋人であった喜八郎が亡くなったことで、

気がふれてしまい、ずっと部屋に籠り、喜八郎の首を大事にしていたそうな。

水野年方が描いたのは、立川善馬がお由と出会う場面です。

 

水野年方 条野採菊・著『百物語』口絵

 


いや、大事な首を投げるんかい!!

 

いくら見知らぬ男がやってきたからといって、

大切にしていた恋人の生首で撃退するだなんて。

トリッキーにもほどがあります。

ショッキングなシーンではありますが、

立川善馬の表情が絶妙すぎて、可笑しみすら感じました。

 

 

ちなみに。

今回出展されていた木版口絵の中で、

もっとも印象に残ったものをご紹介いたしましょう。

富岡永洗の 《地図を眺める美人と象》 です。

 

富岡永洗 地図を眺める美人と象

 

 

地図を真剣に眺める美人。

そして、なんだか楽しそうな象3頭。

この2つの絵には、一体どんな関係があるというのでしょうか。

絵の前に立って、ずーっと考えてみましたが、

ビックリするくらいに、何にも思いつきませんでした。。。

無駄に鑑賞時間を使ってしまって、ぴえんを超えてぱおん。

 

 

最後に。

これまで不定期に太田記念美術館の虎小石情報をお届けしてきたわけですが。

 

 

 

いつの間にやら、虎小石のLINEスタンプが爆誕していました。

 

 

 

可愛いじゃねぇか。

ダウンロードしちゃったじゃねぇか。

あと、これまで勝手に虎小石は、

太田記念美術館のマスコットと思っていましたが、

お知らせの文面には、“当館のアイドル” とありました。

アイドルだったんかい。

 

 



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