■HOKUSAI
監督:橋本一
出演:柳楽優弥、田中泯、阿部寛、永山瑛太、玉木宏、瀧本美織
2020年製作/129分/G/日本
町人文化が華やぐ江戸の町の片隅で、
食うこともままならない生活を送っていた貧乏絵師の勝川春朗。
後の葛飾北斎となるこの男の才能を見いだしたのが、
喜多川歌麿、東洲斎写楽を世に出した希代の版元・蔦屋重三郎だった。
重三郎の後押しにより、その才能を開花させた北斎は、
彼独自の革新的な絵を次々と生み出し、一躍、当代随一の人気絵師となる。
その奇想天外な世界観は江戸中を席巻し、
町人文化を押し上げることとなるが、次第に幕府の反感を招くこととなってしまう。
(映画.comより)
「昨日6月1日より、
休館を余儀なくされていた都内の多くの美術館が再開しました。
同じく、映画館も再開しました。
アートテラーとしては、美術館を訪れるべきなのでしょうが、
1日は映画の日なので、熟考した末に、映画館へ行くことに (笑)
でも、ちゃんと間を取って (←?)、美術の映画を観てきました。
本来は昨年に封切られる予定だった本作。
製作が決定した時から、とっても楽しみにしていたのですが、
結論から言ってしまうと、期待していただけに、
それも、さらに1年お預けされてしまっただけに・・・。
最後まで、ほぼ飽きることなく観ることはできたのですが。
「・・・・・で?」 というのが率直な感想です。
若き日の北斎が制作でもがく姿とか。
浮世絵をはじめとする娯楽を取り締まる幕府への反感とか。
いろんなテーマが取り上げられているのですが、
それに対して、どう乗り越えたのかの部分が、なんともボヤっとしてまして。
浮世絵の摺りの “ぼかし” くらいにボヤボヤ。
それゆえ、カタルシスを感じることがほとんどありませんでした。
気づいたら、次の話題に移っている。
気づいたら、柳楽優弥が田中泯になっている。
日本人なら、皆まで言わずともわかるだろう、ということなのでしょうが。
この映画は 『北斎』 ではなく、『HOKUSAI』。
海外の方向けでもあるので、
これで北斎の人生がちゃんと伝わるのか、
なかなか不安になってしまいました。
あと、北斎以外のエピソードを盛りすぎ。
蔦屋重三郎とか喜多川歌麿とか柳亭種彦とか。
それはそれで興味深くはあったのですが、
そのせいで、北斎が薄まっていた感は否めません。
とはいえ、役者陣は良かったです。
蔦屋重三郎を演じるのは阿部寛。
江戸時代の人物とは思えないほど身長が高すぎて、
最初は古代ローマからタイムスリップしてきた設定かと思っていましたが。
だんだんと、蔦屋重三郎に見えてきました。
自分の信念を貫き、どんな時でもめげずに、
新しい商品を生み出そうとし続ける蔦屋重三郎。
最後の方には、耕書堂の版元というよりも、佃製作所の社長に見えてきました。
この映画の最大の当たりはやはり、
田中泯をキャスティングしたことにあるでしょう。
北斎にしか見えなかったです。
ただ、ベロ藍を初めて目にした北斎が、
雨の中で頭からベロ藍を被り、ベロ藍まみれになる場面があるのですが。
それは北斎ではなくて、ただの舞踏家・田中泯なんよ。
何でそのシーン入れたん??
ちなみに。
キャスティングで一つ気になったことと言えば、
実際の彼らを見たことがないので、可能性が無くはないわけですが。
若き北斎が、柳楽優弥。
蔦屋重三郎が、阿部寛。
喜多川歌麿が、玉木宏。
東洲斎写楽が、浦上晟周。
いやいや、全員イケメンすぎるでしょ。
その画力ゆえ、伝記映画を観ているというよりも、
『明治東亰恋伽』 やら 『文豪ストレイドッグス』 やら、
そういう類のものを観ているような気分になりました。
(星3.5つ)」
~映画に登場する名画~
《富嶽三十六景 神奈川沖浪裏》