現在、紅ミュージアムの地下1階にある特別展示室では、
“中島ゆり恵「未来の匠-きらめく彫金-」” が開催されています。
こちらは、昨年同会場で開催された展覧会、
“Authentic Aesthetic-岩田俊彦 作品展-” に続く・・・・・
紅ミュージアムと若手作家がコラボする 「未来の匠」 シリーズの最新回です。
今回、紅ミュージアムとコラボしたのは、中島ゆり恵さん。
金沢を拠点に活躍する金工作家です。
金工作家と言いますと、金属をトンカントンカン叩いているため、
どちらかといえば男性的な、マッチョな印象があるかもしれませんが。
中島さんの作品はどれも、
女性らしい軽やかさがあります。
しかし、作風が軽やかだからと言って、
決して、軽くさらっと見過ごしてしまいませんように。
作品には象嵌や切り嵌め、接ぎ合わせなど、
さまざまな彫金の伝統的な技法が使われています。
さりげなく、実は超絶技巧のデパートのような作品なのです。
ちなみに、こちらの 《望郷》 という作品の基部にご注目くださいませ。
網目のようになっていますが、
これは金属のパーツを組み合わせたのではなく、
一枚の金属の板を彫りぬいて成形したものなのだとか。
繊細に見えて、意外とマッチョな作品です。
さてさて。
前回の岩田さんの展覧会の際にも、紅ミュージアムとコラボして、
小町紅を入れるためのオリジナルの紅板が制作・販売されていましたが。
今回ももちろん制作・販売されています。
しかも、オール新作!
昨年、岩田さんの展覧会では当初、事前に岩田さんに、
2、3点ほどデザインしてもらい、それを受注制作してもらう予定だったそうですが。
想像以上に、岩田さんが紅板のアイディアをたくさん出してくれて、
しかも、そのどれもが素晴らしかったとのことで、結果、全部で27点の新作が発表されました。
今回もまた然り!
当初は2.3点ほどの新作紅板が制作される予定だったそうですが。
中島さんのアイディアが溢れ出て止まらないわ、
かつ、どのデザインも不採用したくないほど珠玉だわ。
ということで、今回もトータル18点の紅板が制作されました。
表面に施された繊細かつ超絶な金工細工ばかりに目が奪われてしまいますが。
実は、今回の紅板の制作にあたって、
中島さんは筐体からすべて手作りしたそうです。
例えば、鏡の周囲を囲むこちらの飾り↓
1個1個すべて、中島さんが手作業で彫ったそうです。
展示室内でプロジェクションされたスライドで、
この紅板の制作工程が紹介されていましたが、
マジで気が遠くなるような細か~~い作業のオンパレードでした。
さらに、スライドを観て、もう一つ驚愕したのが・・・・・、
2つの筐体を留める蝶番も、中島さんが一から制作していたこと。
まさに一人NASA。
まさに一人佃製作所。
可愛く繊細なだけじゃない。
技術力の高さに驚かされる展覧会でした!
ちなみに。
常設展示室のテーマ展示コーナーでは、“歯にまつわるモノ語り” が開催中です。
江戸時代のオーラルケア事情が紹介されていました。
いろいろ興味深いものが展示されていましたが、
特に興味を引かれたのが、江戸時代に作られた木製の女性用の部分入れ歯です。
歯が黒いのは、お歯黒仕様だから。
作り物とわかっていても、ギョッとするものがありました。
それから、こちらのピンク色の粉も興味深かったです。
その正体は、なんと歯磨き粉。
江戸時代から歯磨き粉は存在し、
しかも、色はピンク色が主流だったそう。
歯磨き粉=白というイメージがありますが、
それは意外にも、明治以降になってからだったとか。
とはいえ、主流ではなくても、
江戸時代にも白い歯磨き粉もあったそうです。
こちらは、かつて歯磨き粉に使われていたという房州砂。
当時は、この砂に香りや、
清涼剤として薄荷を加えていたとのこと。
江戸時代から、歯磨き粉はスースーしていたのですね。
余談ですが、房州砂を展示するためのこの小袋が、ちょっとだけ気になりました。
わざわざ小袋に入れずとも、何か小皿的なもので展示してもよかったような。
この小袋のせいで、よからぬ薬のように見えました (笑)