現在、岡田美術館で開催されているのは、
“東西の日本画 ―大観・春草・松園など―” という展覧会です。
岡田美術館といえば、陶磁器のコレクションや、
江戸美術のコレクションが充実しているイメージがありますが。
実は、横山大観の幻の大作 《霊峰一文字》 や、
横山大観 《霊峰一文字》(部分) 大正15年(1926) 岡田美術館蔵
数年前、34年ぶりに公開され話題となった速水御舟の 《木蓮(春園麗華)》 をはじめ、
速水御舟 《木蓮(春園麗華)》(部分) 大正15年(1926) 岡田美術館蔵
近代日本画のコレクションもかなり充実しています!
そんな岡田美術館の近代日本画コレクションから、
東京と京都を中心に活躍した画家の作品を紹介する展覧会です。
なお、岡田美術館の近代日本画コレクションが一堂に会すのは、実に7年ぶりとのこと。
とても貴重な機会ですよ。
さてさて、一流品揃いの岡田美術館。
どの作品も、展覧会の目玉と言っても過言ではありませんが。
今回特に注目したいのが、菱田春草の作品群です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
今年2021年は、菱田春草の没後110年の節目の年。
それを記念して、今回の展覧会では、
岡田美術館が所蔵する菱田春草作品全7点が一挙展示されています。
菱田春草 《海月》(部分) 明治時代 20世紀初頭 岡田美術館蔵
岡田美術館コレクションでも屈指の人気を誇る、
《海月》 にももちろん目と心を奪われてしまいましたが。
個人的に強く印象に残っているのは、《瀑布の図》 という一枚です。
菱田春草 《瀑布の図》 明治時代 20世紀初頭 岡田美術館蔵
輪郭線を一切用いず、滝が表現されています。
絵画なのに、なぜか写真のように感じられる不思議な一枚です。
もしくは、吉田博の新版画のようにも感じられました。
あるいは、旅の宿のパッケージのようにも感じられました。
また、もう一人フィーチャーされていたのが、
「西の松園、東の清方」 と並び称された美人画家・上村松園です。
(注:大人の事情で画像を掲載できませんが、清方の作品も出展されています)
今展では、岡田美術館が所蔵する松園の美人画4点が揃い踏み。
松園が得意とする凛とした美人が勢ぞろいしていました。
中でも注目したいのが、《汐くみ》 です。
上村松園 《汐くみ》(部分) 昭和16年(1941) 岡田美術館蔵
汐くみ、とは舞踊の演目。
在原業平が一目惚れした汐汲み、
つまり塩を作るために海水を汲む職業の女性をモチーフにした作品です。
実際の汐汲みではなく、あくまでも演目での汐汲みであることは重々承知していますが。
一回で汲む海水の量が少ないような・・・。
しかも、台車 (?) でコロコロ運ぶって、効率悪いような・・・。
佇まいや所作は美しいですが、
仕事はそこまでできないタイプとお見受けしました。
さて、他に印象的だったのが、
大橋翠石の 《虎図屏風》 という作品です。
大橋翠石 《虎図屏風》 明治時代 19世紀末〜20世紀初頭 岡田美術館蔵
今でこそあまり知名度のない大橋翠石ですが。
実は、明治33年に開催されたパリ万国博覧会で、
日本人画家として唯一、金牌 (=最高賞) に輝いた人物です。
しかも、4年後のセントルイス万国博覧会でも連続して金牌を受賞。
美術界の北島康介ともいうべき人物です (←?)。
その大橋が得意としたのが、虎の絵。
明治天皇や東郷平八郎も、大橋の虎の絵のファンだったそうです。
そんな美術界屈指の虎党の絵だけに、当たり前ですが、
描かれた虎のリアルさは、一歩も二歩も抜きんでていました。
髭や毛並みの表現はもちろん、虎の体温や息遣いまでもが感じられるよう。
あまりにリアルすぎて、夜な夜な虎がこの屏風から出てこないか心配になりました。
それと、もう1つ印象に残っているのが、
下村観山による 《旭日》 という作品です。
月に雲がかかっている作品は、
わりと目にしたことがあるのですが。
太陽に雲がかかっている作品は、あまり目にしたことがないような。
おめでたいのか、そうでもないのか、その判断をしかねる作品でした。
ちなみに、どうでもいいですが、
じーっと眺めていたら、無性に天下一品に行きたくなりました。