昨年、東京都庭園美術館では、
20年ぶり4度目となるルネ・ラリック展が開催されましたが。
今年も、東京都庭園美術館では、
ルネ・ラリックの展覧会が開催されています。
“あー、なるほど。コロナの影響で、改めて開催されるのか!”
と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、さにあらず。
昨年のラリック展とは、まったくの別物。
“ルネ・ラリック リミックス―時代のインスピレーションをもとめて” と題して、
アール・ヌーヴォーやアール・デコ、ジャポニズムやキュビスムといった、
さまざまな様式を “リミックス” したラリックのスタイルに着目した展覧会です。
ラリックを紹介する展覧会は数多く開催されているので、
ラリックの作品は、ほぼ網羅している気になっていましたが。
今展で初めて目にする作品が多々ありました。
どんだけ作品を制作しているんだ、ラリックは。
例えば、こちらのペンダント。
タイトルは、《冬景色》。
浮世絵にインスピレーションを受けて制作されたもので、
パリ郊外の自邸付近で撮影した冬景色を表現しているそうです。
冬景色をジュエリーにしようという発想が、すでにナナメをいっています。
なおかつ、単なるアイディア勝負ではなく、
ジュエリーとしてちゃんと美しいのが、ラリッククオリティです。
また、初見のガラスの作品で
特に印象的だったのが、こちらの花器。
モチーフとなっているのは、ヒョウタンです。
日本美術では、そう珍しくないモチーフですが、
西洋美術でヒョウタンをモチーフにしたものは初めて目にした気がします。
なんとなく、琳派っぽい印象を受けました。
琳派っぽい、といえばこちらの花器も。
図案化された鹿が、全体に配置されています。
まるで俵屋宗達が描いた鹿のよう。
おそらく画集か何かの形で、
ラリックは琳派の鹿の絵を目にしたのでしょう。
しかし、それをただ取り入れるのではなく、
自分流にアレンジ、リミックスしているのがラリック流。
このスタイルであれば、モチーフの数だけ、作品が生まれるはず。
ラリックの作品が数多いのも納得です。
それと、もう一つ印象的だったガラス作品が、
《ナンキン》 あるいは 《三角の面取り》 と名付けられた花瓶。
キャプションの英訳が、「Nanking」 となっていたので、
おそらく、中国の南京のことを指しているとは思うのですが。
南京っぽさは、そこまで感じられませんでした。
ハザードランプのボタン。
あるいは、お仏壇のはせがわの昔のロゴマークです。
ちなみに。
昨年のラリック展では、新館の展示デザインを、
建築家の永山祐子さんが手掛けていましたが。
今展では、ポーラ美術館の “モネ-光のなかに” も手掛けた、
気鋭の建築家・中山英之さんが展示デザインを担当しています。
朝香宮邸だった本館に対して、ホワイトキューブの新館に、
“もうひとつの邸宅” を作り上げたようなイメージなのだそう。
窓ごしにラリックの作品が見えています。
そんな邸宅の入り口を抜けると・・・・・
そこには、グラフィックデザイナーの岡崎由香さんによる、
立体的な図鑑の世界をイメージした展示空間が広がっています。
建築家とグラフィックデザイナーのアイディアがリミックスした斬新な展示空間でした。
なお。
今年のラリック展も、昨年のと同様に、
全面的に写真撮影が可能となっています。
旧朝香宮邸の建築とラリック作品が、リミックスした写真が撮り放題。
是非、お気に入りの一枚を撮影してみてください。