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風景画のはじまり コローから印象派へ

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現在、SOMPO美術館では、フランスのランス美術館のコレクションから、

選りすぐりのフランスの近代風景画を紹介する展覧会が開催されています。

その名も、“風景画のはじまり コローから印象派へ”

 

 

 

展覧会は、全部で5章仕立てとなっています。

冒頭を飾るのは、「コローと19世紀風景画の先駆者たち」。

こちらでは、ミシャロンやベルタンといった、

フランスの初期の風景画家たちの作品が紹介されています。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

とりわけフィーチャーされていたのが、

ジャン=バティスト・カミーユ・コローの作品群。

 

 

 

実は、ランス美術館は、コローの油彩作品27点を所蔵しているのだそう。

この数は、フランス国内においては、

ルーヴル美術館に次ぐ所蔵数を誇るとのこと。

今展には、そのうちの半数を超える16点が出品されています。

 

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 《湖畔の木々の下のふたりの姉妹》

1865-70年 油彩/カンヴァス 67.4×47.6cm Inv.887.3.82 ランス美術館
© MBA Reims 2019/Photo : C.Devleeschauwer

 

 

まとまった数のコロー作品を観るのは久しぶりでしたので、

改めて彼の作品を観ていたら、一つ気づいてしまったことがありました。

コローの作風が抒情的なので、

これまではスルーしていましたが、

樹木の描き方が、実は独特であるということに。

特に印象的だったのが、こちらの 《突風》 という作品です。

 

ジャン=バティスト・カミーユ・コロー 《突風》 1865-70年 油彩/カンヴァス 47.4×58.9cm Inv. 899.16.23 ランス美術館
© MBA Reims 2019/Photo : C.Devleeschauwer

 

 

よくよく観てみると、なんか変。

いや、だいぶ変です。

突風に煽られた枝が、

裏返ったビニール傘みたいになっています。

幹から枝がどういう風に生えている設定なのでしょう??

また、葉っぱの表現は、

西洋画というよりも、どこか水墨画のようです。

普通に見えて、意外と変な人。

それがコローです。

 

 

続く第2章のテーマは、コローも関りの深い 「バルビゾン派」。

 

 

 

バルビゾン派を代表するミレーの作品こそ無かったですが。

ともに 『バルビゾンの七星』 に数えられるドービニーや、

トロワイヨン、テオドール・ルソーらの作品が紹介されていました。

 

テオドール・ルソー 《沼》 1842~43年 油彩/カンヴァス 41.1×63.3cm Inv. 907.19.227 ランス美術館
© MBA Reims 2019/Photo : C.Devleeschauwer

 

ちなみに。

今回紹介されていたバルビゾン派の画家の中で、

個人的に注目したいのが、アンリ=ジョゼフ・アルピニーという画家です。

 

 

 

不勉強ながら、初めてその名を知りました。

何より印象的だったのが、彼に付けられたあだ名です。

その作風から、『田園風景と樹のミケランジェロ』 と呼ばれていたのだとか。

何度も咀嚼してみましたが、

いまいちイメージが湧きませんでした。。。

例え下手にもほどがあるあだ名です。

 

 

第3章では、「画家=版画家の誕生」 と題し、

一般的な展覧会では素通りされがちな版画をフィーチャー。

 

シャルル=フランソワ・ドービニー 《カラスのいる木》 1867年 エッチング/紙 21.7×29.9cm 個人蔵

 

 

第4章では、コローに 『空の王者』 と言わしめた画家で、

モネの師匠にもあたるウジェーヌ・ブーダンをフィーチャーしています。

 

ウジェーヌ・ブーダン 《ベルク、出航》 1890年 油彩/カンヴァス 79×110.2cm Inv. 907.19.34 ランス美術館
© MBA Reims 2019/Photo : C.Devleeschauwer

 

 

そして、展覧会を締めくくる第5章では、「印象主義の展開」 と題し、

モネやシスレーなど、日本人が大好きな印象派の作品の数々が紹介されていました。

 

クロード・モネ 《べリールの岩礁》 1886年 油彩/カンヴァス 65.6×81.5cm Inv. 907.19.191 ランス美術館
© MBA Reims 2019/Photo : C.Devleeschauwer

 

 

それらの中には、どちらかといえば、

人物画のイメージが強いルノワールによる風景画も含まれています。

 

 

 

なお、そんな印象派の巨匠たちに交じって、

端っこの方 (?) でひっそりと紹介されていたのが、スタニスラス・レピーヌなる画家。

 

 

 

先ほど紹介したアルピニー同様に、

今展を通じて初めてその名を知った画家です。

キャプションでは、このように紹介されていました。

 

 『独学で絵画を学び、コローやヨンキントから影響を受け、

  船や港、セーヌ川沿いの風景などを多く描く。

  第1回 「印象派展」 に参加したが、

  モネやシスレー、ピサロらの作品に比べ、

  柔和で落ち着いた色調の作品は、批評家からは概ね好評を得た。』

 

特にコレといった特徴やエピソードが無い人物なのでしょう。

好評を得るなら、もっと好評を得ないと。

“概ね” だなんて、キャラが薄いにもほどがあります。

 

 

風景画に特化しているゆえ、

やや地味な印象は否めませんが。

心にじんわりと染み入るタイプの展覧会でした。

ヒーリング効果は抜群です。

星

 

 

 ┃会期:6月25日(金)~9月12日(日)

 ┃会場:SOMPO美術館

 ┃https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2020/musees-reims-2021/

 

 

~読者の皆様へのプレゼント~
“風景画のはじまり展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、7月5日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。





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