現在、長谷川町子記念館では、
企画展 “いじわるばあさん” が開催中。
長谷川町子が生んだ 『サザエさん』 と並ぶ人気漫画、
『いじわるばあさん』 にスポットを当てた初の展覧会です。
『いじわるばあさん』 は、長谷川町子が 『サザエさん』 を新聞連載していた傍らで、
1966年から1971年にかけて週刊誌 『サンデー毎日』 で連載していた4コマ漫画です。
その着想源となったのは、アメリカの漫画家ボブ・バトルによる 『意地悪爺さん』 とのこと。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。原画は全て©長谷川町子美術館蔵)
主人公を爺さんから、ばあさんに変更したのは、
「おバァさんのほうがグッと迫力あるのになァ」 という感想を抱いたからだとか。
展覧会の冒頭では、その記念すべき初登場となる貴重な回の原画が展示されていました。
もちろん 『いじわるばあさん』 という漫画は知っていましたが。
実は、ちゃんとは漫画を読んだことがなく、
この展覧会を通して初めてさまざまなことを知りました。
まず何より、いじわるばあさんの本名が、
「伊知割石 (いじわる イシ)」 であることを知りました。
それから、好きで意地悪をしているのではなく・・・・・
意地悪をせずに、人に優しくしていると、
潜在性欲求不満ショック発作を起こしてしまう体質であることも知りました。
また、意地悪の対象となる相手は、
人は子供から大臣まで、と実に幅広く、
さらには、動物にも躊躇なく仕掛けているようです。
中でも一番の餌食となっていたのが、実の家族たち。
“こんな母親、マジでイヤだわ・・・” と、ドン引きするレベルです。
と思っていたら、実の息子たちによって、
時にいじわるばあさんも返り討ちにあっていました。
こんな家族、マジでイヤだわ・・・
なお、展覧会では、『いじわるばあさん』 全6巻から、
よりぬかれた名作50本の貴重な原画も展示されていました。
想像していた以上に、ブラックな作風のものが多く、
『サザエさん』 と同じ作者の作品とは思えないほど!
ほのぼの路線の 『サザエさん』 に対して、
ブラックユーモアに振り切った 『いじわるばあさん』 を連載することで、
もしかしたら、長谷川町子はバランスを取っていたのかもしれませんね。
そういえば、『コボちゃん』 を連載している植田まさしさんも、
いたずら好きのサラリーマンを主人公にした 『かりあげクン』 を連載していますし。
ちなみに。
連載されていた当時、『いじわるばあさん』 は、
単行本の初版の売り上げが 『サザエさん』 を超えるほどの人気漫画だったそうです。
その人気にあやかって、『サンデー毎日』 ではこんな企画があったそう↓
「1967(昭和42)年3月26日号『サンデー毎日』
『長谷川町子の意地悪クイズ』 です。
正解者の中から6名に車が、
5名にカラーテレビが当たるというとんでもない豪華企画。
「1967(昭和42)年4月30日号『サンデー毎日』
今では考えられない太っ腹なプレゼントです!
そして、その当選者の名前と住所も発表されるという、
今では考えられない個人情報の取り扱いにも驚かされました (笑)
なお、この 『長谷川町子の意地悪クイズ』 は好評ゆえ、全13回も行われたそうです。
また、『いじわるばあさん』 と同時期に、その姉妹版ともいうべき、
『いじわるお手傳いさん』 や 『いじわる看護婦さん』 も発表されていたのだとか。
いじわるなおばあさんは、まだ可愛げがあって笑えますが。
いじわるなお手伝いさんやいじわるな看護婦さんは、
それは、ただの社会人不適合者であるような気がします。
それと、『いじわるばあさん』 を紹介する上で外せないのが、
青島幸男が主演を務めたドラマ版の 『意地悪ばあさん』 ですね。
当初は、よみうりテレビで制作されていたようですが、
のちにフジテレビで連ドラ版、スペシャル版が制作されたとのこと。
そんなスペシャル版の中には、こんな回もあったそうです。
どんなドラマだよ!!
『ゴジラvsキングギドラvsメカゴジラ』 みたいになってるじゃん。
意地悪ばあさんといじわる看護婦が戦うのは、百歩譲ってまだイメージが湧きますが。
何でこの戦いにサザエさんが巻き込まれているのでしょう??
ちなみに。
会場は全体的に撮影禁止となっていますが、
一か所、フォトスポットが用意されていました。
それは、こんな4コマ漫画をモチーフにしたフォトスポット。
(1コマ目)
「モシモシ 娘さんの一人あるきはキケンですよ」
(2コマ目)
「おくりましょう」
「すみません」
(3コマ目)
「おまわりさんの一人立番はキケンですよ」
「大丈夫ですったら!」
(4コマ目)
「いいのいいの、あたしゃ一ぺん人を思いっきりなぐってみたいんだ」
このフォトスポットでは、
そんないじわるばあさんに殴られるシーンを撮ることができるそう。
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いや、それはもう意地悪ではなく、
サイコパスの犯罪者のレベルです!