現在、渋谷区立松濤美術館では、
“デミタスカップの愉しみ” という展覧会が開催中です。
濃いコーヒーを飲むための小さなコーヒーカップ、デミタスカップ。
その小さな世界に魅せられ、これまでに2000点以上のデミタスを集めた、
村上和美さんのコレクションの中から厳選した約380点を紹介する展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
展覧会は、2部構成となっています。
第一会場となる地下1階では、「デミタス、ジャポニスムの香り」 と題し、
ジャポニスムの影響を受けたデミタスカップが中心に紹介されていました。
一口にジャポニスムの影響がみられるといっても、そのバリエーションは多種多様。
山水画風のデミタスカップもあれば、
未詳(チェコと推定) 《金彩花樹鳥文枝型カップ&ソーサー》 1875~1890年代 村上和美氏蔵
染付っぽいデミタスカップや、
ロイヤルウースター 《染付写し丸文詰めカップ&ソーサー》 1878年 村上和美氏蔵
模様は梅、取っ手の形は桜の花びらを模したデミタスカップも。
エインズレイ 《金彩梅花文カップ&ソーサー》 1856年頃 村上和美氏蔵
さまざまな日本のモチーフを見て取ることができました。
こんなにも日本をフィーチャーしたデミタスがあったなんて。
日本人としてはなんとも嬉しい限りです。
さらに、ジャポニスムの流れを受け、その後に続く、
アール・ヌーヴォーやアール・デコのデミタスカップも紹介されています。
もちろん、日本産のデミタスカップも紹介されていました。
おそらく海外向けに作られたものなのでしょうが。
海外のジャポニスムのデミタスと比べてしまうと、
どこかもったりとしているような印象を受けました。
ちなみに、日本産のデミタスカップの中には、こんなデザインのものも。
久保(久谷) 《「千顔」カップ&ソーサー》 1900年代前期 村上和美氏蔵
カップの内側にも外側にもソーサーにも、オジサンがみっちり。
超絶技巧のその絵付けにも驚かされますが、
コロナ禍においては、この密っぷりにも驚かされました。
どこぞのフェス状態です。
さてさて、お次は2階の展示室へ。
こちらでは第2部の 「デミタス、デザインの冒険」 と題し、
珍しい形状や装飾のデミタスカップの数々が紹介されていました。
デミタスの見どころは内側にもあり。
ということで、下部が覗けるようなコーナーもありました。
「大きいことはいいことだ」 という言葉がありますが、
コーヒーカップに関しては、むしろその逆なのかもしれませんね。
この展覧会を通じて、小さいデミタスカップにこそ、
魅力がよりギュッと凝縮されている印象を受けました。
なお、展覧会のラストでは、村上さんが特に思い入れがあるという、
デミタスカップの数々が、村上さんご本人の言葉と併せて紹介されています。
ミントン 《金彩蜘蛛の巣に花文カップ&ソーサー》 1902~1912年頃 村上和美氏蔵
それらの中で個人的に一番惹かれたのが、
ロイヤルウースターの 《金彩ジュール透かし彫りカップ&ソーサー》。
透かし彫りの名工とされたジョージ・オーウェンの手わざが光る逸品です。
カップとソーサーそのものももちろん美しいですが。
その影すらも、まるで美術作品のようでした。
ちなみに。
村上さんのこだわりは、集めたデミタスカップは、
必ず1度は、実際にコーヒーを入れて飲んでみることにあるのだとか。
また、インスタグラムで毎日 「#本日のカップ」 を紹介しているようです。
こういう状況下なので展覧会に行けないという方は、
村上さんのインスタをフォローしてみてはいかがでしょうか?