この秋、サントリー美術館で開催されいてるのは、
“開館60周年記念展 刀剣 もののふの心” という展覧会。
タイトルずばり、刀剣にスポットを当てた展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
1961年の開館以来、『生活の中の美』 を基本理念とし、活動してきたサントリー美術館。
それゆえに、果たして、刀剣は生活の中の美なのだろうか、と疑問に思いましたが。
曰く、もののふの人生や暮らしにおいては、
特に重要なアイテムで、なおかつ美を兼ね備えているとのこと。
なるほど。
現代人の視点に捉われていたのを、一刀両断された気がしました。
さてさて、展覧会には、重要文化財の 《太刀 銘 大和則長》 や、
《太刀 銘 幡枝八幡宮藤原国広造/慶長四年八月彼岸 附金梨地鳩紋蒔絵糸巻太刀拵》 といった、
由緒ある名刀の数々が紹介されています。
特徴的なのは、美術館や博物館、個人コレクターが所蔵する刀剣がごくわずかであること。
その大半が、泉涌寺や伏見稲荷大社、仁和寺、妙心寺など、
京都を中心とした由緒正しい寺社仏閣に奉納され、伝来した刀剣です。
刀剣の武器としての一面はもちろんのこと、
近展では、信仰の対象としての一面もフォーカスされています。
紹介されていた刀剣の中には、
祇園祭でお馴染みの八坂神社に奉納されたものも。
祇園祭の山鉾の順番は、くじ引きで決めるのが慣例ですが。
先頭は、くじ引き関係なく、長刀鉾と決まっているのだそう。
刀剣がいかに重要なポジションであるのかが窺い知ることができますね。
また、数ある刀剣の中で特に見逃せないのが、
織田信長を主祭神とする建勲神社に伝わる 「義元左文字」 です。
あの桶狭間の戦いで、信長が今川義元に勝利した際に奪い取ったもの。
茎には、『永禄三年五月十九日 義元討捕刻彼所持刀』 と金象嵌されています。
なお、信長の死後、秀吉、家康の手に渡ったそう。
戦国時代のスターたちに愛された名刀です。
ちなみに、その奥に見えている 《紺糸威胴丸 兜・大袖付》 も信長の所有と伝わるもの。
戦国ファンにはたまらない展覧会です。
そして、もう一つの目玉が、《薙刀直シ刀 無銘(名物骨喰藤四郎)》。
秀吉の愛刀として知られる刀剣です。
刀剣には、「童子切安綱」 や 「へし切長谷部」など、
その切れ味の鋭さに由来するさまざまな号がありますが。
おそらく、そのトップに君臨するのが、「骨喰藤四郎」 なのでは?
というのも、実際に斬ったわけではなく、斬るふりをしただけで、
相手の骨が砕け散ったという伝説が、「骨喰藤四郎」 の由来なのです。
もう魔法やん。
なので、間違っても、この刀剣の鑑賞中に、
ふざけて、「わっ、斬られた!」 なんて斬られたふりをしたら、
骨が砕け散ってしまうかもしれませんので、ご注意くださいませ。
ちなみに。
展覧会では、刀剣だけでなく。
刀剣を飾る鍔や三所物といった刀装具や、
刀剣が描かれた絵画や絵巻、浮世絵など、
刀剣にまつわるあらゆるジャンルの作品も紹介されています。
刀剣にまつわるといえば、こんなものも。
刀剣を収める鞘とともに展示されているのは、
あの本阿弥光悦を輩出した本阿弥家だけが発行を許された、刀剣の鑑定書です。
この鑑定書には、折り目が付いていますよね。
そこから生まれたのが、「折り紙付き」 という言葉。
本物の 「折り紙」 を観る機会はあまり無いので貴重です。