東京都庭園美術館で開催中の展覧会、
“キューガーデン 英国王室が愛した花々” に行ってきました。
展覧会のタイトルにあるキューガーデンとは、
ロンドンの南西部キューにある王立の植物園の名前。
132ヘクタールの広さを誇る園内には、
3万種以上の植物と約1万4000本の樹木が植えられているそうです。
そんな今でこそ世界的にも規模の大きなキューガーデンですが、もとは小さな庭園だったそう。
その発展に大きく尽力したのが、シャーロット王妃です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
美術や音楽など芸術に造詣が深い一方で、
天文学や植物学など、自然科学にも強い関心を抱いていたというシャーロット王妃。
彼女の存在が、ボタニカルアート (植物画) の芸術性を高める大きな要因となったそうです。
さてさて、今展で紹介されているのは、
キューガーデンが所蔵する貴重なボタニカルアートの数々。
選りすぐりの約100点が本館と新館を使って一挙公開されています。
ただの植物のイラストと侮るなかれ。
その細密な描写と彩色の美しさは、
思わず目を奪われるものがあります。
また、一口にボタニカルアートといっても、その種類はさまざま。
収録される図鑑によって、それぞれ微妙に性格や技法が異なります。
例えば、こちらは、1787年に発刊されて以来、今なお続いている、
世界最古の植物雑誌 『カーティス・ボタニカル・マガジン』 の図版。
画面の左にあるのが、水彩で描かれた原画です。
その右にあるのは、原画をもとに銅版画で複製したもの。
複製できるのは、もちろん線の部分のみ。
つまり、彩色はすべて手作業で行われているそうです。
そんな手彩色の伝統は、1948年まで続いていたのだとか。
個人的に好きなのは、『フローラの神殿』。
R・J・ソーントンによる19世紀の植物図鑑の怪作です。
もちろんすべて実在している植物なのですが、
意味深な背景と相まって、どこかシュルレアリスムっぽい雰囲気に。
ちなみに、これらもすべて手彩色が施されているそうです。
『フローラの神殿』 があまりにインパクトがありすぎて。
その後に、一般的なボタニカルアートを観ると、
若干物足りなさを感じてしまうので要注意です。
『フローラの神殿』 はほどほどに。
また、展覧会では、ボタニカルアートだけでなく、
植物がデザインされた王室ゆかりの陶磁器も紹介されていました。
それらの中で特に注目したいのが、
ウェッジウッドの 「クイーンズウェア」 です。
この 「クイーンズウェア」 のクイーンこそ、シャーロット王妃。
彼女がウェッジウッドに与えた称号なのだそうです。
ちなみに。
会場の一角には、シャーロット王妃と、
ウエッジウッドの創始者ジョサイア・ウエッジウッドを含む、
周辺の人物の相関図が紹介されていました。
その相関図を何気なく眺めていると、意外な人物の名前を発見しました!
な、な、なんと!
『進化論』 のチャールズ・ダーウィンは、
ウエッジウッドの創始者の孫だったのですね。
なんだかんだで、今展での一番の収穫はこの事実だったかもしれません。