今年の芸術の秋の大本命展覧会、
東京都美術館の “ゴッホ展――響きあう魂 ヘレーネとフィンセント” に行ってきました。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
ゴッホをフィーチャーした展覧会は、
なんとなく毎年のように開催されている印象があるので、
「またゴッホ展かー」 と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
が、しかし、今年のゴッホ展の主役は、
ある意味、ゴッホではなく、こちらの女性です。
フローリス・フェルステル 《ヘレーネ・クレラー=ミュラーの肖像》 1910年 クレラー=ミュラー美術館
名前は、ヘレーネ・クレラー=ミュラー。
ゴッホの評価がまだそれほど高くなかった頃に、
彼の天才性に目をつけ、世界最大のゴッホコレクターとなった人物です。
彼女がコレクションしたゴッホの作品は、油彩画90点超と素描・版画約180点。
そのコレクションを広く公開すべく、彼女がその生涯をかけて創設したのが、
ファン・ゴッホ美術館と並び、2大ゴッホ美術館と称されるクレラー=ミュラー美術館です。
さて、最初の展示室で紹介されていたのは、
彼女がコレクションしたゴッホ以外の画家の作品の数々。
ジョルジュ・スーラ 《ポール=アン=ベッサンの日曜日》 1888年 クレラー=ミュラー美術館
左)アンリ・ファンタン=ラトゥール 《静物(プリムローズ、洋梨、ザクロ)》 1866年
右)ピエール=オーギュスト・ルノワール 《カフェにて》 1877年頃 いずれもクレラー=ミュラー美術館
ヘレーネは、スーラやシニャックといった新印象派の作家をはじめ、
ルノワール、ルドン、ブラックなど、幅広いジャンルの作品を収集していたようです。
また、紹介されていた中には、
抽象画を描き始めた頃のモンドリアンの作品も。
ピート・モンドリアン 《グリッドのあるコンポジション5:菱形、色彩のコンポジション》 1919年 クレラー=ミュラー美術館
当時はまだまだ新しかった芸術運動を、
正当に評価できる眼をヘレーネが持っていたからこそ、
ゴッホの天才性を評価できたのでしょうね。
ちなみに。
彼女が初めてコレクションした作品というのが、
パウル・ヨセフ・コンスタンティン・ハブリエルによるこちらの絵画です。
パウル・ヨセフ・コンスタンティン・ハブリエル 《それは遠くからやって来る》 1887年 クレラー=ミュラー美術館
タイトルは、《それは遠くからやって来る》。
タイトルだけ耳にすると、ホラー映画のキャッチコピーのようです。
「それは遠くからやってくる。そして、それからは誰も逃れることはできない。」 的な。
続く展示室では、いよいよゴッホコレクションが登場!
まずは素描作品が一挙公開されていました。
なんだ素描か・・・・・と侮るなかれ!
ゴッホは素描もスゴいんです。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《砂地の木の根》 1882年4-5月 クレラー=ミュラー美術館
普通の画家が描く油彩画と同じくらいか、
それを超えるくらいの圧が、ゴッホの素描からは感じられます。
油彩画であろうが素描であろうが、常にフルスイング。
それがゴッホです。
さてさて、クレラー=ミュラー美術館でも、
あまり展示される機会が無いという貴重な素描をたっぷり楽しんだ後は、
今展のメインディッシュとなるゴッホの油彩画がお待ちかね。
初期から最晩年までの作品が、年代順に紹介されています。
それらの中には、今展のメインビジュアルにもなっている 《夜のプロヴァンスの田舎道》 や、
フィンセント・ファン・ゴッホ 《夜のプロヴァンスの田舎道》 1890年5月12-15日頃 クレラー=ミュラー美術館
クレラー=ミュラー美術館のゴッホコレクションの顔ともいえる 《種まく人》 も。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《種まく人》 1887年6月17-28日頃 クレラー=ミュラー美術館
さらには特別に、もう一つのゴッホ美術館、
ファン・ゴッホ美術館からも数点作品が来日しています。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《黄色い家(通り)》 1889年9月 ファン・ゴッホ美術館 (フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
2大ゴッホ美術館がまさかの競演!
これだけでも大いに行く価値ありです。
改めて、コロナ禍で開催実現したことが奇跡に思えます。
ちなみに。
数ある作品の中で個人的に一番惹かれたのは、
晩年に描かれた 《草地の木の幹》 という一作です。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《草地の木の幹》 1890年4月後半 クレラー=ミュラー美術館
木の幹の根元に、草むら。
特にどうってことのない光景で、
普通に生活していたら、見過ごしてしまいそうなのですが。
そこにはタンポポや白い花など、
小さな花がたくさん咲き誇っていました。
遠くばかりを見ていると、足元の小さな幸せに気が付かなくなってしまう。
そんな人生訓のようなものも感じられる作品でした。
それと、もう一つ印象に残っている作品、
オランダ時代のゴッホが描いた 《女の顔》 です。
フィンセント・ファン・ゴッホ 《女の顔》 1884年11月-1885年1月 クレラー=ミュラー美術館
添えられたキャプションの説明によると、
この頃、ゴッホは農民の顔を多く描いていたそう。
それに対し、友人のウィレム・ファン・デ・ワッケルなる画家が、こんな言葉を残しています。
「彼はいつも “醜いモデル” を選んでいた」 と。
完全なるルッキズム。
もし、ワッケルが現代も生きていたら、炎上は確実です。
最後に。
展覧会特設ショップで見つけた気になるグッズをご紹介。
これまでさまざまな展覧会で、
さまざまなコラボ商品が発売されてきましたが。
ビックリマンシールとのコラボは初めてではないでしょうか。
こんな激アツなコラボがあったのかと、
少年時代にビックリマンシールを集めた自分としては、胸が熱くなりました。
ゴッホだけでなく、他の画家でも作って欲しいです。
もし販売されたあかつきには、箱買いします。マジで。
┃会期:2021年9月9日(木)~11月7日(日)
┃会場:東京都美術館
┃https://www.yamatane-museum.jp/exh/2021/gyoshu.html