この秋、SOMPO美術館では、
“川瀬巴水 旅と郷愁の風景” が開催されています。
(注:展覧会は一部撮影可。展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
ここ近年、人気急上昇中の 「新版画」。
吉田博や小原古邨と並んで、
その代表選手ともいうべきが、今展の主役である川瀬巴水です。
特に風景を得意としたことから、 “昭和の広重” と讃えられている巴水。
晩年には、 「風景が版画に見えてきた。」 という言葉を残しているほどです。
・・・・・・名言のようでもありますが、
世にも奇妙な世界に迷い込んだ人の発言のようでもあります。
と、それはさておき。
川瀬巴水にはもう一つの通り名があります。
それは、“旅情詩人”。
自他共に認める旅行好きだった巴水は、
日本全国を旅しては、その風景を作品に仕立てました。
北は青森から、南は熊本まで。
オープニングのサザエさんばりに、
日本全国の観光地・景勝を巡っていたそうです。
今展で紹介されているのは、そんな巴水が旅して制作した新版画の数々。
緊急事態宣言が全国的に解除されたとはいえ、
まだまだ安心して旅行できないという方もいらっしゃるはず。
そういう方には、うってつけの展覧会といえましょう。
左)川瀬巴水 《塩原おかね路》 1918(大正7)年秋 木版、紙 渡邊木版美術画舗
右)川瀬巴水 《駿河興津町》 東海道風景選集 1934(昭和9)年3月 木版、紙 渡邊木版美術画舗 〔前期のみ出品〕
なお、巴水ほどではなくても、旅好きの方は要注意です。
巴水の作品を観ていると、旅情をかきたてられること必至!
今すぐにでも旅に出たくなってしまうことでしょう。
そうなった場合は、首都圏住まいの方に限りますが、
巴水が都内を描いた作品をより、じっくり鑑賞してくださいませ。
彼の手にかかれば、見慣れた都内の景色も、ドラマチックでエモい景色に。
何の変哲もない (?) 大田区馬込の景色も、
まるで映画のワンシーンのように情感たっぷりなものになります。
川瀬巴水 《馬込の月》 東京二十景 1930(昭和5)年 木版、紙 渡邊木版美術画舗
わざわざ遠くに旅に出なくても、
感動的な光景は身近なところにもある。
そんなことを巴水の作品は教えてくれます。
ところで。
これらの新版画、巴水の画力もさることながら、
摺師や彫師の熟練の技術も見逃せないところです。
例えば、巴水の晩年の傑作 《増上寺之雪》 にご注目。
川瀬巴水 《増上寺之雪》 1953(昭和28)年 木版、紙 渡邊木版美術画舗
こちらは9枚の版木を使い、
なんと42度の摺りを重ねているそうです。
想像するだけで、やる気が萎えます (←?)。
とはいえ、実際にどんな風に摺りが重ねられているのか。
まったくもって、見当がつきません。
そんな僕のような人間にもわかるように、
会場では、約30度の摺りを重ねる 《野火止平林寺》 を例に、
完成までの工程がわかるように制作された資料が展示されていました。
これが・・・・・
こうなって・・・・・
こうなるのだそう。
写真の巴水は、その出来に満足げですが、
彫師と摺師の苦労と技術力があって初めて完成するわけです。
巴水はすでに人気を確立していますが。
この展覧会を機に、摺師や彫師の人気も高まりますように。
ちなみに。
展覧会のラストでは、
巴水とゆかりの深いあの人物がフィーチャーされていました。
↑この時代は髪がまだフサフサ。
アップルの創業者、スティーブ・ジョブズです。
実は、ジョブズは巴水の大ファン。
10代の頃に友人の家に飾ってあった巴水の浮世絵に感動し、
「版画を分けてほしい!」 と友人の母に訴えたほどだったそうです。
アップルを創業した後に、来日しては、
東京の画廊で巴水の作品をたびたび購入していたとのこと。
今展では、そんなジョブズが買った作品と同様のものが紹介されています。
紹介されていた作品の半数以上に、
富士山が描かれていたのが印象的でした。
ジョブズは富士山が好きだったのでしょうか?
調べてもわからなかったので、Siriに聞いてみました。
・・・・・だそうです。
┃会期:【前期】10月2日(土)~11月14日(日) 【後期】11月17日(水)~12月26日(日)
┃会場:SOMPO美術館
┃https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2020/kawasehasui/
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住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、10月20日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。