現在、ヴァンジ彫刻庭園美術館で開催されているのは、
“すべての ひとに 石が ひつよう 目と、手でふれる世界” という展覧会。
ミケランジェロが愛した大理石の産地として知られるカッラーラで制作していた大木達実さんや、
全面にびっしりと刻まれた鑿痕が特徴的な長谷川さちさんや、
ペルーの首都リマにある博物館での個展経験を持つ北川太郎さんら、
“石の声” を聴くようにして、石を素材に作品を制作する、
石を愛し、石に愛された (?) 8人の石彫作品を紹介する展覧会です。
ちなみに、“すべての ひとに 石が ひつよう” という展覧会タイトルは・・・・・
アメリカの絵本作家バード・ベイラーの同名の絵本に由来するもの。
不勉強ながら、この絵本のことを全く知りませんでしたが、
なんでも、友達の石 (=自分だけの石) を見つけるための10のルールを記した絵本なのだそうです。
さわりだけ読んでみましたが、その冒頭では、
「友達の石を持っていない子供はかわいそう」 という一文が。
今日の今日まで自覚がなかったのですが、
友達の石を持っていない僕はかわいそうなヤツだったのですね。
と、それはさておき。
大理石とガラス彫刻を組み合わせたイケムラレイコさんの作品や、
石を黒い毛糸でぐるぐる巻きした廣瀬智央さんの作品など、
(ただし、発泡スチロールを巻いたものも混じっています)
一口に石彫作品と言っても、その種類や表現はさまざま。
また、設置場所も展覧会スペースに限らず、さまざまで、
美術館自慢の庭にも、イランの彫刻家ホセイン・ゴルバによる作品が設置されていました。
なお、こちらの 《あかるい影》 という作品は、
花梨の木の木陰がモチーフになっているのだそう。
特に説明書きはなかったですが、スツールとして使用するのも可とのこと。
向かって左側のはハイスツールで、やや座るのに苦労するので要注意です。
館外に設置されている作品には、こんなものも。
こちらは、日本と世界各地を旅する冨長敦也さんが、
その土地で知り合った人々とともにハート形の石を磨く 「Love Stone Project」、
国内外約150か所で行われたそのプロジェクトのクレマチスの丘ver.です。
パッと見、パパブブレのようなこのオニックスを、
会期終了日まで、ひたすら磨き続けるのだそう。
果たして、来年3月にはどれだけツルッツルになっているのか気になるところです。
「自分も磨いてみたい!」 という方は、こちらのページをご確認くださいませ↓
また、プロジェクトだけでなく、館内には冨長さんの作品も。
その中でも特に印象に残ったのが、こちらの 《地平の人》 です。
しばらく眺めていたら、地平の人というよりは、石鹸置きの人 (?) に見えてきました。
さてざて、今展の出展作品は、基本的に触るのもOK!
サブタイトルにもあるように、“目と、手でふれる” ことができます。
不思議なもので、触れば触るほど、作品が愛おしく感じられました。
美術館を後にする頃には、すっかり石の虜となっており、
石の作品たちと離れがたい気持ちになっていたほどです。
すべての ひとに 石が ひつよう。
そのことを実感させられる展覧会でした。
ちなみに。
ヴァンジ彫刻庭園美術館のコレクションの要となる、
イタリアを代表する現代彫刻家ジュリア−ノ・ヴァンジの石彫3点も、
今展に限り、特別にタッチOKとなっていました。
個人的にイチオシは、こちらの 《立方体の中の男》 です。
立方体の内部にさまざまなレリーフが施されています。
立方体の中に手を入れて、是非その凹凸を楽しんでくださいませ。
目をつむれば、『立方体の中身はなんじゃろな』 ゲームとしても楽しめますよ (←?)。
なお、床面の凹凸具合を見るに、
この男は床から浮かび上がり、起き上がったのかも。
ただ、自分の身長を把握してなかったようで、
思いっきり、頭を天井にぶつけてしまっています。
高身長あるある。