現在、東京都写真美術館で開催されているのは、“松江泰治 マキエタCC”。
木村伊兵衛写真賞を受賞した経験を持ち、国内外で活躍する写真家、
松江泰治さん (1963~) の東日本の公立美術館では初となる展覧会です。
タイトルの “マキエタCC” とは、
どこぞのゴルフ場の名前・・・ではなく。
〈makieta〉(=マキエタ) と 〈CC〉。
今展で紹介されている2つの写真シリーズ、それぞれの名前です。
では一体、それぞれどんなシリーズなのでしょうか?
まずは、2001年から制作されているという 〈CC〉 からご紹介いたしましょう。
〈CC〉 とは、「シティー・コード」(City Code) の略です。
例えば、こちらの 《PAR 32319》 という作品。
《PAR 32319》 2008年 発色現像方式印画 アマナコレクション©TAIJI MATSUE Courtesy of TARO NASU
PAL、つまり、パリで撮影された写真です。
松江さんはこれまでに世界各地で地表を撮影してきました。
その撮影の際には、松江さんはあるルールを守り続けています。
一つは、画面に地平線や空を含めないこと。
そして、もう一つは、被写体に影が生じないよう、順光で撮影すること。
ルールは単純ですが、この条件を満たす場所は、
世界広しと言えども、そうたくさんあるわけではないそうです。
ちなみに。
松江泰治 《LPB 1733》
こちらは、本邦初公開となる 〈CC〉 シリーズ最新作にして最大作。
《LPB 1733》 です。
超高解像度で撮影されているので、
近づいてじっくり観てみると、人や車の姿も確認できます。
もしかしたら、どこかにウォーリーがいるかも。
そう思って観始めたら、画面の隅から隅までマジマジと見入ってしまいました。
さて、続いては、〈makieta〉。
本格的に発表されるのは今展が初となる最新シリーズです。
《WAW 62222》 2021年 発色現像方式印画 作家蔵 ©TAIJI MATSUE Courtesy of TARO NASU
・・・・・・・・・・あれ?
〈CC〉 と一緒じゃないの??
そう思われた方もいらっしゃることでしょう。
しかし、もう一度よーく注意してご覧くださいませ。
何か違和感に気が付かないでしょうか?
実はこちらは、都市の模型を撮影したものなのです。
〈makieta〉 とは、ポーランド語で 「模型」。
〈CC〉 と同じ撮影ルールを課し、
世界各地の都市や地形の模型を撮影したシリーズです。
ちなみに。
こちらは、某大手デベロッパーが所有する東京の模型を被写体としたもの。
左)松江泰治 《TYO 90942》 右)松江泰治 《TYO 90946》
模型とわかった上で観ても、
空撮写真のように思えるほど、精巧に作られています。
さて、今展では、そんな2つのシリーズ作品が、
分けられることなく、同じ空間で展示されています。
(床に展示されているのは、新作の映像作品です)
そのため・・・・・
上)松江泰治 《HAV 192597》 右)松江泰治 《UIO 70846》
「実際の都市?それとも、模型?」 と混乱すること必至!
その不思議な感覚を楽しむ展覧会といえましょう。
ちなみに。
世界各国の都市に混じって、
大阪と札幌を被写体にした作品がありました。
松江泰治 《OSA 13829》
左)松江泰治 《SPK 35243》 右)松江泰治 《SPK 44134》
近づいて観てみれば、看板に日本語が見て取れて、
日本の都市を写したものであることがもちろんわかるのですが。
不思議なことに、離れた状態でパッと見た瞬間に、ここが日本であることがわかりました。
なぜ?
これは、他の国の都市の写真と見比べたうえでの自分なりの見解なのですが、
海外の都市は、統一感があるorまったく統一感が無いのどちからに属するような。
しかし、日本の都市はそのちょうど中間で、
それぞれが思い思いに建物を建ててはいるものの、
多少は周りの目を気にして、なんとなく周囲と調和させているような。
都市の姿は、国民性を表しているのかもしれませんね。