現在、水戸芸術館現代美術センターで開催されているのは、
“佐藤雅晴 尾行-存在の不在/不在の存在” という展覧会です。
2019年3月に、惜しまれつつも、
45歳という若さで他界したアーティスト・佐藤雅晴。
その没後初となる大規模回顧展です。
佐藤雅晴さんは、「ロトスコープ」 という技法で知られるアーティスト。
「ロトスコープ」 とは、アニメーションの技法のひとつで、
実際に撮影した映像をパソコン上でなぞるようにトレースしてアニメーション化するものです。
・・・・・・と、説明を聞いたところで、よくイメージが分からないゾ。
そんな方はぜひ、こちらの佐藤さん自身が、
YouTubeにアップした映像をご覧くださいませ↓
そんな 「ロトスコープ」 という地道な技法で、
佐藤さんは自ら撮影した映像や画像を丹念にトレースし、制作を続けました。
今展では、上の動画でも紹介されている 《ダテマキ》 や、
誰もいないのに着信音だけが鳴り響くさまざまなシチュエーションで構成された 《Calling》、
死の直前まで描き続けたという 「死神先生」 シリーズといった佐藤さんの代表作を含む・・・・・
計64点 (映像作品26点、平面作品38点) が、
全9室からなる会場で紹介されています。
時にシニカルで、時にユーモラス。
そして、時に不気味でホラーチック。
会場は、佐藤雅晴ワールド全開。
佐藤さん本人がいないのに、
佐藤さんの存在が感じられるようでした。
と、同時に、これだけの稀有な才能の持ち主がこの世にはもういない。
その残酷で悲しい事実を突きつけられる展覧会でもありました。
まさしく、“存在の不在/不在の存在” でした。
さてさて、展覧会場全9室どれも見ごたえがありましたが、
やはり圧巻だったのは、代表作 《東京尾行》 が紹介された5室です。
それまでの佐藤さんのアニメーション作品と違って、
《東京尾行》 では実写映像の一部だけがトレースされています。
一目で東京とわかる 「ザ・東京」 な情景もあれば、東京の片隅の何気ない情景も。
一部がアニメーションになっているだけで、
どこか現実感が薄れるような不思議な感覚を覚えます。
もちろん佐藤さんの代表作なので、これまでに何度も紹介される機会はありましたが。
今回は初めて全部で11ある映像がモニターではなく、
プロジェクターを使い、大画面で映し出されれています。
11台のプロジェクターが上から吊り下げられ、
展示室内に浮かんでいる様は、一瞬ドローンに見間違えてしまいました。
また、今回の佐藤雅晴展は、水戸芸術館現代美術センターの前に、
佐藤さんの生まれ故郷である大分県立美術館で開催されていましたが。
その会期終了後、水戸芸術館に、とあるコレクターさんより、
佐藤さんの初期の作品を所持している旨、連絡があったそう。
それゆえ、図録には掲載されていない作品が2点、急遽出品されています。
長年行方がわからなかったという貴重な作品とのこと。
特に印象的だったのは、左の作品↓
階段の途中で何かもの言いたげな表情で立ち尽くす女性。
何を訴えかけているのかと思い、近づいて観ると・・・・・
口元を中心に蟻がたかっていました。。。
今すぐバルサンを焚きましょう。