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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村

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現在、東京都渋谷公園通りギャラリーで開催されているのは、

“Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村” という展覧会。

日本初、いや、世界でもおそらく初となる 「おかんアート」 の大規模展覧会です。

 

 

 

おかんアートとは、その名の通り、

おかん、つまり、世の 「母」 たちが作るアートのこと。

といっても、女性芸術家が子どもを産んで、母になって・・・・・ということではなく。

美術のプロではない 「母」 たちが、思い思いに創作したアート作品を指します。

そんな 「おかんアート」 に長年注目していたという下町レトロに首っ丈の会と、

作家で写真家、編集者でもある都築響一さんをキュレーターに迎えた今展覧会。

会場では、日本各地から選りすぐられた 「おかんアート」、1000点以上が紹介されています。

 

 

 

キュレーターの都築さんは、おかんアートをこう評しています。

 

「おかんの辞書に断捨離はない。

 荷物のヒモは丸めて引き出しにしまっておく。

 輪ゴムは水道の蛇口にかけておく。

 デパートの紙袋は冷蔵庫の脇に差しておく。とりあえず。

 そしてある日、おかんにひらめきの瞬間が訪れる——

 アレをああやったら、かわいいのできるやん!

 こうしておかんアートは生まれた(たぶん)。」

 

 

 

断捨離や、ミニマリズムな生活とは対極の位置にいるのが、おかん。

そのライフスタイルは、時代遅れだったのではなく、

物を捨てずに取っておくどころか、新たな命を吹き込み、持続可能な社会を作っていく。

そんなSDGsの走りだったのでしょう (たぶん)。
 
あと、おかんの辞書には断捨離だけで著作権も無いようで。

 

 

 

どこかで見たことがあるようなキャラが、

どこでも見たこと無いような姿で再現されていました。

 

 

職業柄、いわゆる一流の芸術家や工芸家の作品を目にすることが多いため、

正直にカミングアウトすると、最初は、若干苦笑いを浮かべながら 「おかんアート」 を見ていました。

 

 

 

が、しかし!

クリエイティブ精神に貴賎なし。

芸術家であろうが、おかんであろうが、

人が真剣に作り出したモノは、純粋に胸を打つものがありました。

虎ロープで作った虎や松ぼっくりを使った作品など、

 

 

 

素直に、その新鮮な発想力に驚かされる作品も多々ありました。

「おかんアート」 という先入観で目にしているから、アレですが、

これらはフランスの新進気鋭の現代アーティストの作品ですと言われ、

メゾンエルメスとか森美術館とかに展示されていたら、信じて疑わないような気もします。

・・・・・・・・いや、それはさすがに言い過ぎましたね。

 

 

 

おかん感溢れる作品も、やっぱり多かったです (笑)

ただ、これらの 「おかんアート」 には、

フランスの新進気鋭の現代アーティストの作品には無い不思議な温かみがあります。

日本が生んだ唯一無二のアート。

それが、おかんアートです。

星

 

 

なお、紹介されていたおかんアートの中には、こんなものも。

 

 

 

おそらく、金太郎の前かけをモチーフにしたものなのでしょう。

『金』 の字の配置とか、フォントの雰囲気とか、

絶妙に素人っぽさが滲み出ていて、これぞ 「おかんアート」 という感じです。

ただ、よーく見てみると、ところどころに 『Dior』 の文字が。

 

 

 

中流ではなく、上流のおかん。

こういう高級なおかんアートもあるのですね (←?)。

 

 

さて、東京都渋谷公園通りギャラリーでは、

都築響一さんがキュレーションする特別展示、

“おかん宇宙のはぐれ星” も同時開催されています。

こちらは、おかんアートの感覚に限りなく近くありながら、

独自の表現を展開する孤高の表現者3名を紹介するというもの。

 

高田馬場の名画座・早稲田松竹で長年清掃の仕事をしながら、

劇場入口やトイレの棚を飾るオブジェを自発的に作ってきた荻野ユキ子さんや、

 

 

 

いわゆるチラシ箱を日々大量に作り続けている野村知広さんの作品も印象的でしたが。

 

 

 

個人的にもっとも印象に残っているのは、嶋暎子さん (1934~)。

若き日は広告の仕事をしていたそうですが、50歳で仕事を引退。

ステイホーム期間中にひょんなことから、新聞紙バッグを作るようになったそうです。

 

 

 

その量の多さや精緻さに、まず気を取られてしまいますが。

注目したいのが、バッグに取り付けられたタグです。

 

 

 

これらは、チラシを切り取って作ったコラージュ。

そのコラージュのセンスが、どれもキラリと光っていました。

会場の壁に掛けられていた大型の平面作品もまた、

島さんによって、チラシで作られたコラージュ作品です。

 

 

 

この完成度の高さは、確かに、

「おかんアート」 というレベルではないですね。

実は、嶋暎子さんは昨年10月に、

世田谷美術館分館 清川泰次記念ギャラリーにて、

新聞紙バッグやコラージュ作品を発表する展覧会を開催したそうで。

わずか数日の会期ながら、SNSでプチバズりしたそうです。

今展がきっかけで、さらにバズる可能性は大!

要チェックです。

 

 

ちなみに。

余談も余談ですが、展覧会の会場にて、こんな光景を見かけました。

年配の男性が、女性スタッフさんを捕まえて、

「今、Bunkamuraザ・ミュージアムで、“ザ・フィンランドデザイン展” 観てきたんだけどな。

 それと比べると、こっちのデザインはまったく洗練されてないよ」 と、ネチネチ詰め寄っていたのです。

人を笑顔にする 「おかんアート」 に対して、

「おとんクレーム」 は、人の笑顔を引き攣らせていました。

 

 

 


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