現在、千葉県立美術館では、“山本大貴 -Dignity of Realism-” が開催中。
千葉出身で、写実絵画界の若きトップランナー山本大貴さんの美術館初個展です。
実力はもちろんのこと、人気もトップクラスの山本さん。
その作品は発表されるたびにソールドアウト。
近年では公平を期すために、抽選販売となっているほどです。
それゆえ、彼の作品の大多数が個人蔵に。
“写実絵画の殿堂” ことホキ美術館が所蔵している作品も一部ありますが。
今展に出展されている約40点のほとんどがもちろん個人蔵。
しかも、日本全国津々浦々の個人蔵。
これだけの個人蔵作品が一堂に会するのは、
もしかしたら、最初で最後の機会になるかもしれません。
さてさて、山本さんの約10年間の画業をたどる今展。
フェルメールを彷彿とさせるクラシカルな作風のシリーズや、
牧阿佐美バレエ団のダンサーを描いたシリーズ、
現代の新たなミューズであるコスプレイヤーを描いたシリーズなど、
山本さんの代表的なシリーズの代表作が取り揃えられています。
他のシリーズと比べると、コスプレイヤーのシリーズは、やや異色に感じられるかもしれませんが。
彼がコスプレイヤーを描く理由については、
こちらの対談記事を読んで頂ければ、よくわかると思います。(僕が進行役を務めました)
どの作品もお世辞抜きに素晴らしかったですが、
(実物は画集やHP上で観る何倍も素晴らしい!)
特に印象に残っているのは、新作の 《Sound Around -2021-》 です。
女性の髪や肌の質感だけでなく、
服やヘッドホンの質感までも完璧に再現されていました。
それだけでも充分に驚嘆させられましたが、
さらに、衝撃を受けたのは、プリズムのような光の表現。
あまりにも自然すぎて、照明がアクリルケースに当たっているのかと勘違いしてしまったほど。
フェルメールやモネなど、これまで多くの画家が、光を絵画で再現してきましたが。
この光の表現は、その最前線を走っているかのような印象を受けました。
それからもう一点強く印象に残っているのは、
《the Lilac Fairy (from "Sleeping Beauty")》 です。
モデルを務めるのは、バレエ界の新星・光永百花さん。
チャイコフスキーの 『眠れる森の美女』 の1シーンが描かれています。
指先、いや、爪の先まで神経が行き届いた完璧なるポーズ。
それを余すことなく、完璧に描き切った作品です。
完璧×完璧。
奇跡のコラボレーションです。
ちなみに。
今展の出展作で、個人的に興味深かったのは、
その3つのシリーズに行き着く前の初期の作品です。
シュルレアリスムのような作品もあれば、
ポップアートのような作品も。
山本さん・・・いや、山本君とは、
同い年で同じ千葉県出身ということで、
かれこれ5年以上の勝手知ったる仲なのですが。
こんな時代があったことに、ただただビックリ。
若かりし頃に描いた自画像が、
愉快犯のような仕上がりになっていたのもビックリでした (笑)
一応、本人の名誉のために言っておきますが、
山本君はピュアでシャイで、若干ナイーヴな男です。
決してこんなハッカーみたいなヤツではありません。