■ラファエロ―その愛
作者:里中 満智子
出版社:美術出版社
発売日:1996/6/1
ページ数:242ページ
芸術は己の情熱で神の意志を表現することだ。
芸術は哲学だ…。
レオナルド先生もミケランジェロ先生もそれぞれ素晴しい。
しかし、私は私自身の表現を築かなくてはならない…。
ルネサンスの天才画家ラファエロの生涯を描く。
(「BOOK」データベースより)
「ルネサンスの三大巨匠の一人に数えられるも、
レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロと比べてしまうと、
なんとなーく、キャラが薄く、エピソードも弱い気がするラファエロ・サンツィオ。
そんな彼をあえて漫画の主人公に??
とても気になったので、思わず購入してしまいました。
この漫画のラファエロは、とにかく謙虚。
どんなに評価が高まっても、決して偉ぶることはありません。
お互いをライバル視していたダ・ヴィンチやミケランジェロと違って、
彼らの芸術を心から素晴らしいと認めることができる素直な人物として描かれています。
なるほど。だから、彼の代表作 《アテナイの学堂》 に、
ダ・ヴィンチとミケランジェロの姿が描かれているわけですね。
そんな人間性に優れたラファエロですが、
唯一の欠点ともいえるのが、人が良すぎて、仕事を断れないこと。
どんなオファーも、絶対に引き受け、
しかも、弟子にはほとんど任せず、自分で描こうとします。
さすがに断ってくださいと、弟子に頼まれても、
寝る時間を削ればいいだけだからと、意に介しません。
また、食事の誘いも絶対に断らないラファエロ。
そういえば、「飲み会を絶対に断らない女」 とあだ名された内閣広報官がいましたが。
ラファエロも、ルネサンス時代に、
「飲み会を絶対に断らない画家」 と呼ばれていたのかもしれません。
さらに、ラファエロは、女性からのお誘いも絶対に断らなかったそう。
そのせいで、女好きのレッテルを貼られていたようです。
ちなみに。
37歳という若さで亡くなったラファエロ。
その死因は、女遊びしすぎたせいで、
梅毒にかかって亡くなった、と長年考えられていましたが。
2年前に、ラファエロの死因に関する新たな研究結果が論文で発表されました。
それは、新型コロナウイルス感染症のような病気にかかって、
発熱していたにも関わらず、凍えるように寒い夜に恋人の元を密かに訪れ、
そのことを医師に隠したため、適切な治療を受けられず亡くなったというもの。
結局、女遊びが原因かーい!
ただ、この漫画でのラファエロは、
そんな突っ込みたくなるような最期を迎えていません。
安心して、ラストシーンをお楽しみくださいませ。
ラファエロの生涯を知るという意味では、
とても読みやすく、興味深い本だったのですが。
彼なりに悩みを抱えているとはいえ、
才能があった上での悩み、イケメンでモテるからゆえの悩みなので、
まったくもって共感はできませんでした。
なので、星は2.5つ。
(星2.5)」
~小説に登場する名画~
《ラ・フォルナリーナ (若い女性の肖像)》