現在、国立新美術館にて、同館では約2年ぶりとなる海外展、
“メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年” が開催されています。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
NYのメトロポリタン美術館 (通称MET) が所蔵する、
西洋絵画コレクション約2500点の中から名作65点が一挙来日している展覧会です。
・・・・・と、このような言い回しは、
このブログで何度も使っているので、
「またかよw」 と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが。
今回に関しては、本当に本当に本当なのです!
何がスゴいって、出展作品の中にベラスケスはあるわ、
ディエゴ・ロドリゲス・デ・シルバ・イ・ ベラスケス 《男性の肖像》 1635年頃 ニューヨーク メトロポリタン美術館
The Jules Bache Collection, 1949 49.7.42 展示風景
レンブラントはあるわ、
レンブラント・ファン・レイン 《フローラ》 1654年頃 ニューヨーク メトロポリタン美術館
Gift of Archer M. Huntington, in memory of his father, Collis Potter Huntington, 1926 26.101.10
一昨年のロンドン・ナショナル・ギャラリー展で
その細密描写が話題となったルネサンスの画家カルロ・クリヴェッリはあるわ・・・。
カルロ・クリヴェッリ 《聖母子》 1480年頃 ニューヨーク メトロポリタン美術館
Tempera and gold on wood The Jules Bache Collection, 1949 49.7.5
他にも、ゴヤやゴッホ、モネ、ルノワールといった巨匠たちの作品があるわあるわ。
さらには、65点の中には、フェルメール晩年の重要作 《信仰の寓意》 も!
ヨハネス・フェルメール 《信仰の寓意》 1670‐72年頃 ニューヨーク メトロポリタン美術館
The Friedsam Collection, Bequest of Michael Friedsam, 1931 32.100.18
どれも展覧会の目玉となるほどに、主役クラスの作品ですが、
今展ではあくまで65点のうちの1つ的な扱いで紹介されています。
次から次に、超一級品が登場するので、
「スゴっ!」 と驚くのを通り越して、もはや 「噓でしょw」 と笑けてきてしまうほど。
こんなにも名品ばかりを貸し出して大丈夫なの?
と、心配になったのですが、実は今ちょうど、
METでは大規模な照明改修工事が行われているのだそう。
それゆえ、今回の海外巡回展が実現したのです。
逆に言えば、照明が無事に改修された暁には、
これほどまでに超一級品コレクションを館外に貸出しないということ。
つまり、これが日本で観られる最後の大規模メトロポリタン美術館展かもしれません!
星3つです。
さてさて。
メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 2022年 国立新美術館 展示風景(上2点)
どこを取っても画になる、
どこを取ってもクライマックスな展覧会でしたが。
個人的に、胸アツだったのは、こちらの展示壁です。
メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年 2022年 国立新美術館 展示風景
左に展示されていたのは、カラヴァッジョの 《音楽家たち》。
カラヴァッジョ(本名 ミケランジェロ・メリージ) 《音楽家たち》 1597年 油彩/カンヴァス 92.1x118.4cm
ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1952 / 52.81
右に展示されていたのは、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの 《女占い師》。
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール 《女占い師》 おそらく1630年代 油彩/カンヴァス 101.9x123.5cm
ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Rogers Fund, 1960 / 60.30
カラヴァッジョといえば、暴行や武器不法所持から殺人まで、
その生涯でありとあらゆる犯罪を起こした人物として知られています。
かたや、ラ・トゥールは、暴力事件を起こすなど粗暴な性格で、
かつ、お金に汚く、 暴力をふるって賃金を取り立てたり、召使いに盗みをさせていたのだそう。
そんな美術界きっての2大ワルが奇跡の競演!
美術版 『アウトレイジ』 です (←?)。
なお、展覧会では、この2人とは対照的な、
美術界きっての人格者フラ・アンジェリコの作品も展示されていました。
フラ・アンジェリコ(本名 グイド・ディ・ピエトロ) 《キリストの磔刑》 1420-23年頃 テンペラ/金地、板 63.8x48.3cm
ニューヨーク、メトロポリタン美術館 Maitland F. Griggs Collection, Bequest of Maitland F. Griggs, 1943 / 43.98.5
本名は、グイド・ディ・ピエトロ。
呼び名のフラは、「修道士」。
アンジェリコは、「天使のような」 という意味です。
ルネサンスの画家のミシュランガイドのような、
ヴァザーリの 『画家・彫刻家・建築家列伝』 では、
「まれに見る完璧な才能の持ち主」 と評されています。
また、こんな記述も。
「この修道士をいくら褒め称えても褒めすぎるということはない。
あらゆる言動において謙虚で温和な人物であり、
描く絵画は才能にあふれており信心深い敬虔な作品ばかりだった」
カラヴァッジョとラ・トゥールに爪の垢を煎じて飲ませたいほどの人物です。
ちなみに。
今回の出展作品の中で、もっとも印象に残っているのは、
マリー・ドニーズ・ヴィレール 《マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没)》。
マリー・ドニーズ・ヴィレール 《マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ(1868年没)》
1801年 ニューヨーク メトロポリタン美術館
Mr. and Mrs. Isaac D. Fletcher Collection, Bequest of Isaac D. Fletcher, 1917 / 17.120.204 展示風景
マリー・ドニーズ・ヴィレールは、
現時点で真筆が3点しか確認されていない女性画家。
描かれているほうのマリーも、おそらく女性画家です。
さて、この作品は《サン=ベルナール峠を越えるボナパルト》でお馴染みの、
新古典主義の巨匠ジャック=ルイ・ダヴィッドが作者だと長い間考えられていたとのこと。
1996年にようやく、マリー・ドニーズ・ヴィレールの手によるものとされたそうです。
なお、そのあたりのことは、『芸術新潮』 2021年11月号にて詳しく紹介されています。
改めて自分が担当したこの号を読んでから、
展覧会を訪れたら、何倍も展覧会を楽しめました。
自分でいうのもなんですが、とても良い記事です。
この記事にも3ツ星をあげたいくらいに。