泉屋博古館分館改め、泉屋博古館東京が、
約2年2ヶ月ぶりにリニューアルオープンいたしました。
外観の大きな変化と言えば、以前お伝えしましたが、
おしゃれなミュージアムカフェが誕生したくらいなものですが。
内部は、劇的ビフォーアフターばりに、
「なんということでしょう」 な劇的変化を遂げています。
まず、エントランスホールからして、劇的変化。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
天井から光が差し込むことで解放感もありつつ、
左官職人によって塗り重ねられた壁面が重厚感を醸しつつ。
展示室へと向かう高揚感を高める空間に様変わりしていました。
2部屋あった展示室は、間取りはそのままに、
照明や展示ケースは最新のものへとアップグレード。
天井や壁面、カーペットもすべて変更されていました。
また、これらの展示室を結ぶ新たな展示室と、
かつてこの地に建っていた住友家別邸、
麻布別邸の壁紙や絨毯をイメージした展示室も誕生。
展示室が、新たに2つも増えていました。
さらには、ミュージアムショップや講堂も爆誕。
外観からは想像できないくらいに、内部が大きく変化しています。
人は見かけによらない、とは言いますが、
ミュージアムも見かけによらないようです。
さて、そんな泉屋博古館東京のリニューアルオープン記念展第1弾として、
現在開催されているのは “日本画トライアングル 画家たちの大阪・京都・東京” という展覧会。
泉屋博古館が有する日本画コレクションにスポットを当てたもので、
東京・京都・大阪、それぞれで活躍した画家の作品を、都市の特徴とともに紹介するものです。
見どころの一つはなんといっても、
修復後初披露となる橋本雅邦の 《深山猛虎図》。
寅年に相応しい一枚です。
これはあくまで個人的な感想ですが、
なんとなく、虎のプロポーションに違和感を覚えました。
首が妙に長いのか。寸胴気味なのか。
シルエットだけ見たら、ハダカデバネズミのようでした。
それと、虎以上に違和感があったのが、画面の上部に描かれた葉の数々。
鳥の足のようでもあり、
漢字の 「山」 のようでもあり、
マクドナルドのロゴマークのようでもあり。
何はともあれ、見たことないタイプの葉っぱでした。
違和感といえば、安藤広近の 《文殊菩薩》 も。
こちらは昨年、コレクションに加わったばかりの作品で、
長らく所在不明だったこともあり、日本で公開されるのは実に130年ぶりなのだそうです。
描き込みも彩色も素晴らしかったのですが、
どうしても気になってしまったのが、獅子の顔立ち。
ライオンというか、ほぼ人間。
たてがみの表現といい、
昭和の少女漫画の登場人物のようです。
部活のコーチとか。
また、前期 (~4/10) 限定の見どころが、
大阪の画家・上島鳳山の 《十二月美人》 の一挙公開。
上島鳳山が描く女性の婀娜っぽさにも目を奪われますが、
泉屋博古館のコレクションの礎を気づいた住友家15代当主・住友春翠が、
もっとも信頼を寄せていた表具師・井口邨僊による表具も見どころの一つ。
3幅ごとに、色や文様を変えるというこだわりの表具です。
ずらっと並んだ様は、トレーディングカードを彷彿とさせるものがありました。
ちなみに。
展覧会の出展作家には、“最後の狩野派” 狩野芳崖や、
近年人気急上昇中の木島櫻谷といった有名どころももちろん名を連ねていますが。
山口玲熙や富田范溪、中西耕石、畑仙齢、
森耕石、姫島竹外、村田香谷、深田直城・・・etc
初めてその名を知る日本画家が続々登場します。
「名が知られていない=大したこと作品では無い」 では非ず。
山田秋坪の 《柘榴花白鸚鵡図》 をはじめ、
思わず惹きつけられる作品が多々ありました。
今は無名でも、この中の誰かが、
この先、ブレイクするかもしれません。
アートテラーとして活動して早10数年。
それなりに日本画家の名前を覚えたつもりですが、
まだまだまだ知らない日本画家がいたことに、軽くショックを受けました。
と、同時に日本画の世界の果てしなさを、しみじみ実感しました。
だから、美術は面白い。
最後に。
本展で一番印象に残った作品をご紹介いたしましょう。
富岡鉄斎の 《利市三倍図巻(乾坤)》 です。
絵巻に描かれた人々の中に、
猿回しらしき人物がいるのですが・・・。
猿というよりも、何かしらのUMA。
チュパカブラでしょうか、