現在、東京都写真美術館では、
“本城直季 (un)real utopia” が開催されています。
2006年度に写真界の芥川賞、
木村伊兵衛賞を受賞した本城直季さん。
その初となる大規模展覧会です。
本城さんといえば、一見すると、ジオラマのように見える風景写真。
大判カメラのアオリという機構を利用して撮影した都市の風景です。
そんな本城さんの代名詞ともいうべき作品が、展覧会では多数展示されています。
small planet / Tokyo, Japan / 2005 ©Naoki Honjo
また、この作風に辿り着く前の初期の作品や、
この独自の作風を確立するきっかけとなった作品もあります。
そんな記念碑的ともいうべき作品が、こちら↓
small planet / Tokyo, Japan / 2005 ©Naoki Honjo
何気なく河川敷を撮影したところ、
釣りをしているおじさんがミニチュアのように見えたのだそう。
確かに!
両足をピッタリくっつけて、
直立不動する姿は、まさにミニチュアそのもの。
もしも、このおじさんが、
こんな絶妙なポーズで釣りをしていなかったら。
今の本城さんの活動は無かったのかも。
おじさんさまさまです。
なお、本展には、これまでの代表作はもちろんのこと、
オリンピックの東京を被写体とした撮り下ろしのシリーズや、
Japan National Stadium, Tokyo / 2021 ©Naoki Honjo
アフリカで撮影した初公開シリーズ 「kenya」 も紹介されています。
kenya/ ostrich / 2008 ©Naoki Honjo
これらの作品は、すべてヘリコプターから空撮されたものだそうです。
シートベルトがあるとはいえ、
全開にしたドアから身を乗り出すように撮影する本城さん。
高所恐怖症の僕には、絶対にできない所業です・・・。
なお、デジカメでなく、フィルムで撮影しているため、
撮影中は、どんな仕上がりになっているかわからないとのこと。
偶然性に頼った部分も大きいため、現像した際に、
合格点に達している作品となっている確率は、10%にも満たないのだとか。
どこか可愛らしく、ユーモラスな作品の影に、
写真には写らない大変さがあったのですね。
ちなみに。
展覧会には他にも、京都の街並みを竹和紙に焼き付けたシリーズや、
Kinkakuji / 2007 ©Naoki Honjo
ポラロイドカメラで日常を切り取ったシリーズなども紹介されていましたが。
個人的に一番印象に残っているのが、「LIGHT HOUSE」 シリーズ。
深夜に住宅街を徘徊し (?)、
長時間露光で撮影したシリーズです。
LIGHT HOUSE / Toei Toyama Heights Apartments, Tokyo / 2022 ©Naoki Honjo
写真としては、普通に美しいのですが、
真夜中にカメラを手にして撮影している姿を想像すると、ちょっとだけ怖くなりました (笑)
この写真にいたっては・・・・・
LIGHT HOUSE / Toshima-ku, Tokyo / 2002 ©Naoki Honjo
完全に門の前まで来てますし。
展覧会を訪れて、この写真を目にして初めて、
「えっ、これ私ん家じゃん!」 って気づく人もいるかもしれません。
その恐怖たるや!
「LIGHT HOUSE」 シリーズは、
今なお制作されている本城さんのライフワーク。
次に、深夜、本城さんがすぐそばまでやってくるのは、あなたの家かもしれません。