現在、東京都現代美術館で開催されているのは、
“生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展” という展覧会。
今年2022年に生誕100年を迎える特撮美術監督・井上泰幸の初となる大規模個展です。
もし、井上泰幸という名前を知らずとも、
彼が関わった映画の数々は、必ずや知っているはず。
例えば、円谷英二のもとで助手として、
その特撮人生をスタートさせることとなった 『ゴジラ』。
また例えば、最近日曜劇場でドラマ化されたことでも話題となった 『日本沈没』。
他にも、『モスラ』 や 『ウルトラQ』、『ウルトラマンダイナ』、
スーパー戦隊シリーズなど多数の特撮に関わっています。
展覧会の冒頭では、井上の家族の写真や、
日本大学芸術学部を受験した際の水彩画、
妻で彫刻家の玲子さんの作品などが展示されています。
ファインアートの世界から、特撮美術の道へ。
特撮美術監督・井上泰幸のエピソード0が明らかになります。
展覧会のメインとなるのは、
もちろん井上が関わった映画に関する資料の数々。
それらの中には、井上がデザインを手掛けた怪獣ヘドラに関する資料も。
ヘドラは、ゴジラシリーズの第11作に当たる、
『ゴジラvsヘドラ』 に登場した公害をモチーフとした怪獣。
ファンの間では、実は最強の呼び声も高いカルト的人気を誇る怪獣です。
ヘドロの塊のようなそのインパクトあるビジュアルは、
怪獣図鑑などで何度か目にして、見知っていましたが。
ヘドラがUFOみたいに変形し、空を飛び回れることは初めて知りました。
ちなみに、ジェット噴射のように見えるものは、硫酸のミストとのこと。
確かに、最強と言われるのも納得です。
会場には、映画に実際に使われた模型も展示されていましたが。
それ以上に、膨大な量の図面やスケッチが展示されています。
展覧会というよりも、設定集を読んでいるような感覚に・・・。
特撮映画が好きな人にとってはたまらない展覧会でしょうが、
特撮映画にそこまで興味がないと、なかなかハードな展覧会が続くかもしれません。
とはいえ、会場のラストには、展覧会の目玉、
大型特撮セットが待ち構えていますので、ご安心を。
井上の仕事の最大の特徴は、その徹底的なこだわりっぷり。
綿密なロケハンや計測によって、
ディテールにもこだわり抜いたミニチュアセットを数多く作り上げました。
展覧会の会場で完全再現されていたのは、
そんな井上の代表作ともいうべき、
映画 『空の大怪獣 ラドン』 に登場したミニチュアセット。
西鉄福岡駅周辺の当時の街並みが完璧に再現されています。
なお、ミニチュアセットの一部には、カメラが設置されています。
実は、ミニチュアセットを映した映像が、
会場内のモニターでリアルタイムで観られる仕掛けに。
肉眼で観る以上に、カメラを通したほうが、
より本物の街並みのように感じられました。
これぞ特撮マジックです!
ちなみに。
500点近い展示品の中で、
個人的に一番印象に残っているのが、
1973年に放送されていたという 『ダイヤモンド・アイ』。
ダイヤモンド・アイは、主人公の雷甲太郎のみが、
ブルーダイヤ 「アラビアの王」 という指輪から召喚できるヒーローなのだそう。
目がダイヤモンドって・・・。
せめて、拳がダイヤモンドで、
パンチが最大の必殺技というなら理解できるのですが・・・。