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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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明日への祈り展 ラリックと戦禍の時代

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コロナへの感染が落ち着いてきたと思ったら、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻。

ここ数年、落ち着かない日々が続いていますが、

ルネ・ラリックが生きた20世紀もまた、戦争や感染症が人々を苦しめていました。

 

そんな情勢の中で、ラリックはどんな活動をしていたのか。

これまであまり紹介される機会がなかったラリックの一面にスポットを当てているのが、

箱根ラリック美術館で開催中の “明日への祈り展 ラリックと戦禍の時代” という展覧会です。

 

(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)

 

 

まず、展覧会の冒頭で紹介されていたのは、

フランスが経験した戦争に関連する作品の数々。

 

例えば、アザミ。

 

 

 

普仏戦争に負けたフランスは、

ロレーヌ地方をドイツに割譲することとなります。

そのロレーヌ地方の象徴ともいうべき花がアザミ。

その屈辱を忘れないという意味もあり、ラリックに限らず、

アザミをモチーフにした作品が多く制作されたのだそうです。

 

また例えば、ニワトリ(雄鶏)。

 

 

 

胸を張って雄々しく鳴く雄鶏 (ル・コック) は、

第一次世界大戦時、富国強兵のシンボルとして、

フランスの象徴として広く使われるようになったのだとか。

 

 

続いて紹介されていたのは、

戦争や結核のチャリティイベントのために制作された品々。

 

 

 

当時、フランスでは、戦禍に巻き込まれた人々や、

結核で苦しむ人々のためにチャリテイイベントが開催されていました。

ラリックはそれらのイベントのために、ブローチやメダルを制作。

その売り上げは困窮者へと寄付されたそうです。

 

 

 

ちなみに。

どんな状況、どんな仕事でも、自分なりの美を追求したラリック。

戦争孤児の日というイベントのために、こちらのメダルを制作したのですが・・・・・。

 

 

 

2人の子どもを抱きかかえる女性の服が、

あまりにもスケスケすぎるとクレームが寄せられたのだとか (笑)

確かに、TPOに合ってない感は否めませんね。

 

 

また、感染症絡みで、こんな作品も展示されていました。

 

 

 

「ワクチン」 と命名した近代細菌学の開祖パスツールのメダルです。

元々は、パスツール生誕100年を記念し、

パスツール博物館の扉のレリーフとしてラリックが制作したもの。

パスツール研究所の収益のために、

そのレリーフを縮小したメダルが作られたそうです。

しかも、ラリックの自費で。

 

 

展覧会のラストで紹介されていたのは、

キリストや修道女など 「祈り」 をモチーフにした作品の数々です。

 

 

 

それらの中で特に印象に残っているのが、こちらのお皿。

 

 

 

パッと見は、昭和の冷蔵庫やタンスに貼られていた輪切りのオレンジのシールのようですが。

よく見ると、向かい合って祈る天使たちで構成されているのがわかります。

明日はもっといい世の中になりますように。

そう祈ってくれているような気がしてきました。

星星

 

 

なお、今回の出展作品の中で、

個人的に印象に残っているのは、こちらの蓋物。

 

 

 

タイトルは、《ジョゼフィーヌ》 です。

トンボなのに、なぜジョゼフィーヌ?

と思ったら、どうやらラリックには、

22歳で亡くなったジョゼフィーヌという娘がいたのだそう。

彼女が亡くなった後に作られたというこの作品。

空を自由に飛び回るトンボの姿に、亡き娘を重ねたのかもしれません。

が、しかし、何も作品名、商品名にしなくても・・・。

この作品を買おうとしたお客さんが、

「どうして、ジョゼフィーヌなんですか?」 と気軽な気持ちで質問した際に、

「あ、それは亡くなった娘の名前で・・・」 と返ってきたら、気まずくて仕方ないでしょう。

 

 

ちなみに。

本展にちなんで、ミュージアムショップでは、

「祈り」 に関するアイテムが、これでもかというくらいに入荷されていました。

 

 

 

どうぞ売れ残りませんように(>人<;)

 

 

それと、毎回話題沸騰の展覧会限定スイーツは、

修道院発祥のお菓子を詰め合わせた 「修道院の3時のおやつ」。

 

 

 

口の中に入れると、ほろりと崩れるボルボロン。

口に入れ、溶ける前に3回 「ボルボロン」 と唱えると願いが叶うのだとか。

せっかくなので、やってみたところ、

3回目の 「ボルボロン」 の 「ボロ」 あたりで、

粉状となったボルボロンが口から噴射されました。

飛沫拡散にご注意を。





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