2010年からエルメス財団が開始したユニークなアーティスト・イン・レジデンス。
それが、アーティスト・レジデンシー。
一般的にアーティスト・イン・レジデンスといえば、
ある土地にアーティストを招聘し、一定期間滞在させて制作活動に取り組んでもらうもの。
一方、アーティスト・レジデンシーで招聘された若手アーティストは、
クリスタルや革、シルクや金属といったエルメスのさまざまな工房に滞在し、
その工房の卓越した技術を持つ職人とともに、制作活動に取り組みます。
エルメスの職人技とアーティストの発想力。
その掛け算により、これまでにないアート作品を生み出し続けてきました。
そんなアーティスト・レジデンシーの10周年を記念して、
現在、銀座メゾンエルメスフォーラムで開催されているのが、
“「転移のすがた」アーティスト・レジデンシー10周年記念展” という展覧会。
過去にプログラムに参加した34人の中から選ばれた3人のアーティストと、
それぞれのメンター (推薦者) となるアーティストの作品をペアリングで紹介する展覧会です。
まず紹介されていたのは、小平篤乃生さんと、
そのメンターで師匠でもあるジュゼッペ・ペノーネのペア。
イタリアを代表する芸術家ジュゼッペ・ペノーネのアトリエで5年間学んだという小平さん。
当然のごとく、師匠の作品が展示空間の中心に鎮座していました。
なお、アーティスト・レジデンシーでは、2012年に、
ヨーロッパ最古のクリスタル工房であるサン・ルイに滞在したという小平さん。
その時に制作された、クリスタルを素材とする作品も展示されていました。
特に印象的だったのが、
《サン・ルイのための楽器》 という作品。
サン・ルイが誇るカット技術が用いられた、
2つのクリスタルの半球の中に納められているのは、時計の機構。
右回りに進むべきところを、あえて逆方向に進むよう設定されています。
その針がクリスタルとこすれることで、
かすかな音を生み出すという、なんともポエティックな作品でした。
ちなみに。
この作品の下からコードが、みょ~んと伸びており・・・・・・
それを辿っていったら、コンセントに行きつきました。
コンセントにプラグを刺した時に、
何か大事故が起きてしまったのでしょうか。
壁一面が大変なことになっていました。
そういえば、小学生の時、
コンセントにシャープペンシルの芯を刺して、
ショートさせて先生に怒られていたクラスメイトがいましたっけ。
ふと、そんなことを思い出し、懐かしい気持ちになりました。
さすが時を戻す作品です。
続いて紹介されていたのは、
エンツォ・ミアネスとミシェル・ブラジーペア。
とあるバーで出逢って意気投合した2人というだけあって、
彼らの展示空間は、なんともテンション高めな印象を受けました。
床に散乱していたのは、造花や卵の殻。
展示が終了した際に、撤収作業は大変なはず。
スタッフさんの苦労がしのばれます。
なお、そんな撮っ散らかった床の中に、
爬虫類の骨格模型のようなものがありました。
足の踏み場が無いので、
すぐ近くまでは寄れませんでしたが。
よくよく見てみたところ・・・・・
骨は骨でも、骨をかたどった犬用ビスケットでした。
展覧会が終ったら、スタッフが飼っている犬が美味しく頂くのでしょうか。
さて、最後に紹介されていたのは、
クロエ・ケナム&イザベル・コルナロの女性ペア。
8階と9階の2フロアで展示を行っています。
小平さんと同じく、サン・ルイに滞在したクロエ・ケナムは、
工房で制作されたクリスタルの果実を用いた作品を発表しています。
ガラス製の棚に並べられたこれらの果実は一つとして同じものがないのだそう。
とても下世話な話ですが、サン・ルイのクリスタルなので、
作品であることはいったん脇に置いておいて、どれもお高いのでしょう。
それゆえでしょうか。
鑑賞中、監視のスタッフさんにマンマークされていました。
・・・・・・・いや、盗みませんから。