今年2022年は、「西の松園、東の清方」 と称えられた、
日本を代表する美人画の名手・鏑木清方の没後50年の節目の年。
それを記念して、現在、東京国立近代美術館では、
彼の大規模回顧展 “没後50年 鏑木清方展” が開催されています。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
出展数は、実に109点。
挿絵も得意とした清方ですが、
本展に出展されているのは、オール日本画作品!
しかも、それらの中には、
重要文化財の 《三遊亭円朝像》 を含む代表作の数々や、
雪を好んで描いた清方らしい一作 《雪紛々》 など、回顧展では初公開となる作品も。
また、2019年に、44年ぶりに公開され話題となった、
清方の “幻の名作” 《築地明石町》 も出展されています。
昭和2年に発表された作品ではありますが、
描かれた女性の顔立ちやプロポーションは、実に現代的な印象。
なんとなく、新木優子さんに似ている気がします。
この格好でTGCのランウェイを歩いていても、それほど違和感はないでしょう。
なお、《築地明石町》 は三部作のうちの1点。
会場では、残りの 《新富町》、《浜町河岸》 と併せて展示されています。
美人薄命ゆえ (実際には日本画の作品の保護のため)、
会期中展示替えが多く、ほとんどの美人画が通期で展示されませんが。
この三部作に関しては、通期で公開予定とのこと。
いつでも会いに行ける美人です。
そうそう。美人薄命といえば、こちらの人物も。
『たけくらべ』 で知られる小説家・樋口一葉です。
実は、清方は樋口一葉の大ファンだったのだとか。
本人と直接会う機会はなかったそうですが、
彼女をモチーフにした作品を何点も描いています。
ファン心理が働いたのでしょうか。
五千円札でお馴染みの肖像よりも、
心なしか、美人度がアップしている気がしました。
さてさて、展覧会で気になったのが、
一部の作品のキャプションの右肩についた謎の★マーク。
実は、これは清方自身による作品の自己評価。
大正7年から大正14年までに制作された作品は、
制作控え帳に、三ツ星評価を添えていたそうです。
★★★は 「会心の作」。★★は 「やや会心の作」。★は 「まあまあ」 。
『チューボーですよ!』 と違って、
「星3つです!」 が飛び出すことはほとんどなかったそう。
自身に厳しかった清方が★★★を付けた数少ない作品のうちの一つが、こちら↓
《ためさるゝ日》 (写真左) です。
なお、その右隣に展示されているのも、《ためさるゝ日》 (こちらは、★★)。
踏み絵を題材とした作品で、もともとは対になっていたそうですが。
左幅のほうの 《ためさるゝ日》 が公開されるのは、今回が30年ぶりとのこと。
揃って展示されるのは、実に40年ぶりとのことです。
両方観られるのは、4月3日までなので気になる方はお早めに。
ちなみに。
美人画という印象の強い清方ですが、
社会風俗をモチーフにした作品を多く描いており、
本展ではそういった側面も大いにクローズアップされています。
美人画だけじゃない。
清方のマルチな魅力が明らかになる展覧会。
没後50年を祝うに相応しい展覧会です。