Quantcast
Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

カースティ・レイ:静けさの地平

$
0
0

ガラスの街とやま。

そのシンボルともいうべきミュージアム、

富山市ガラス美術館を久しぶりに訪れました。

 

 

 

現在、こちらで開催されているのは、

“カースティ・レイ:静けさの地平” という展覧会。

 

image

 

 

オーストラリアのガラス作家カースティ・レイ (1955~)

その40年に及ぶ芸術家人生を辿る、

日本では初となる大々的な回顧展です。

 

 

 

故郷であるキャンベラ周辺の自然公園を歩くことで、

「場所とつながる」 という感覚を探求してきたというカースティ・レイ。

そんな彼女が作るガラス作品は、

家であったり、椅子であったり、身近なものがモチーフとなっています。

 

 

 

とりわけ彼女の代名詞ともいうべきなのが、「農具」 をモチーフにしたシリーズ。

 

 

 

普通に生活していたのなら、

特に意識することもないであろう農具が、

彼女の感性と手にかかると、ご覧のような仕上がりに。

 

 

 

作品そのものが美しいのはもちろんですが、

ガラスが落とす、その影すらも美しかったです。

 

 

 

また、彼女の手にかかれば、ガラスとは相性が悪そうな、

タオルやブランケットといった柔らかいものも作品のモチーフに。

 

 

 

びしょ濡れになった際 (←?)、目の前にこれらがあったら、

思わず広げようとして、身体を拭こうとしてしまうことでしょう。

 

なお、モチーフを直接的に表した作品だけでなく、抽象的に表現した作品も。

例えば、こちらの作品。

 

 

 

旧車のランプと、オイル漏れをイメージしているのかと思いきや。

タイトルは、《カモノハシの池》 とのこと。

 

 

 

警戒心が強く、人前になかなか姿を現さないというカモノハシ。

レイは、その出現を日暮れまで待ち続けたことがあるのだそう。

その体験をもとに制作されたこの作品は、

カモノハシが顔を出す瞬間の水面の揺れをイメージしているのだそうです。

 

 

出展数は、約50点。

ガラス作家を目指し始めた頃の初期の作品から、

代表作や新作まで、展覧会では幅広く紹介されています。

 

 

 

ガラスというと、ある程度の制約があって、

作品の幅がそこまで広くない印象がありましたが。

カースティ・レイの作品群を観て、

その思い込みは、見事に砕け散りました。

星

 

 

なお、展覧会のラストで紹介されていたのは、

彼女の最新作となるインスタレーション作品 《リフレクト―開かれた誘い》

 

 

 

壁に掛けられていたのは、

意外にもガラスではなく、写真。

・・・・・と見せかけて、その上にガラス。

 

 

 

コロナ禍において、世界の中でも特に厳しい移動制限がなされていたオーストラリア。

歩くことが制作に重要なレイももちろん、

例外ではなく、自由には歩けない状況に陥っていました。

そんな日々の中で、彼女は外出許可の範囲内を歩き、

板ガラス越しに、カメラで写真を撮影していたのだとか。

そうして撮影された写真の上に、さらにガラスが置かれています。

 

 

 

何気ない風景ではあるものの、

ガラスを通して観ることで、どこか非日常的なものに。

それも、どこかちょっと不穏な印象になっていました。

色眼鏡ならぬ、色ガラスで見た風景といったところでしょうか。

 

 

ちなみに。

ガラス作品を紹介するガラスの美術館だけに、

途中まで違和感も覚えず、当たり前に受け入れていましたが。

 

 

 

よくよく考えてみたら、キャプションは紙製でなくガラス製でした。

ということは、どうでもいいですが、

もし展覧会後に処分するのであれば、

燃えるゴミではなく、燃やせないゴミになるのですね。





1位を目指して、ランキングに挑戦中。
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ にほんブログ村 美術ブログへ


Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Trending Articles