今年2022年、箱根の岡田美術館では1年を通して、
“花鳥風月 名画で見る日本の四季” が開催されます。
テーマはズバリ、「花鳥風月」。
日本美術の重要なモチーフである四季の美に着目した展覧会です。
現在は、その前期として、春夏編が開催中。
岡田美術館が収蔵する名品の中から、
春や夏にまつわる作品の数々が一挙公開されています。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
それらの中には、琳派の酒井抱一による 《桜図》 や、
酒井抱一 《桜図》 江戸時代後期 19世紀前半 岡田美術館蔵
北斎の美人画の傑作と謳われる肉筆画 《夏の朝》、
葛飾北斎 《夏の朝》 江戸時代後期 19世紀初頭 岡田美術館蔵
2015年に80年ぶりに再発見され、大きな話題となった若冲の 《孔雀鳳凰図》 も。
重要美術品 伊藤若冲 《孔雀鳳凰図》 江戸時代 宝暦5年(1755)頃 岡田美術館蔵
さらに、明治以降の名作も大充実!
岡田美術館が誇る速水御舟の傑作《木蓮(春園麗華)》 に関しては、
そのインスパイア元となった可能性もある鈴木其一の 《木蓮小禽図》 と初共演を果たしています。
左)鈴木其一 《木蓮小禽図》 江戸時代後期 19世紀中頃
右)速水御舟 《木蓮(春園麗華)》 大正15年(1926) ともに岡田美術館蔵
なお、7月16日から始まる秋冬編では、
岡田美術館誕生のきっかけとなった尾形光琳の 《雪松群禽図屏風》 や、
コレクションの中でも屈指の人気作、喜多川歌麿の 《深川の雪》 も期間限定で公開予定とのこと。
岡田美術館のスター選手が揃い踏み。
こんなに惜しげもなく出し過ぎてしまって、
来年は大丈夫なの?もしかして、閉店セール??
と、むしろ軽く心配になってしまうほどでした (笑)
2022年は、岡田美術館の当たり年となりそうです。
さてさて、本展は単なる名品展ではありません。
これまであまり展示される機会のなかった、蔵出し作品も紹介されています。
例えば、守藤印の 《吉野花見図屏風》。
守藤印 《吉野花見図屏風》 江戸時代前~中期 17~18世紀 岡田美術館蔵
描かれているのは、奈良県の桜の名所、
金峯山寺のある吉野山で花見をする人々の姿です。
今も昔も、人の本質は変わらないのでしょう。
守藤印 《吉野花見図屏風》(部分) 江戸時代前~中期 17~18世紀 岡田美術館蔵
お酒が入り、喧嘩する人もいれば、
輪になって踊り出す人々もいました。
江戸時代から続く (?) 風物詩のようなこの光景が見られなくなって早数年。
今年は無理でも、来年こそは普通に見られますように。
また例えば、田村水鷗の 《花見・舟遊図巻》。
田村水鷗 《花見・舟遊図巻》 江戸時代中期 18世紀前半
作者の田村水鷗は、江戸時代中期の浮世絵師で、
版画は作らず、肉筆画しか残していない謎多き人物です。
現存している作品は、わずか20点ほど (←フェルメールの半分ちょっと!)。
その中でも、こちらの 《花見・舟遊図巻》 は、最高傑作と称されているとのこと。
保存状態も良く、本件で必見の隠れた名作です。
また、タイトルには、”名画で見る” とありますが、
本展では、四季がモチーフに描かれた工芸の名品の数々も紹介されています。
《柳橋水車蒔絵硯箱》 明治~大正時代 19~20世紀 岡田美術館蔵
《色絵花籠文皿》 鍋島藩窯 江戸時代 17世紀後半~18世紀前半 岡田美術館蔵
その中で特に印象に残っているのが、
尾形乾山の 《色絵春草文茶碗》 という作品。
尾形乾山 《色絵春草文茶碗》 江戸時代 18世紀 岡田美術館蔵
その色合いといい、そのポップなタッチといい、
男の子向けのサンリオのお茶碗のようでした (←?)。
それから、もう一点印象的だったのが、鍋島の 《色絵流水藻文皿》。
《色絵流水藻文皿》 鍋島藩窯 江戸時代 17世紀後半~18世紀前半 岡田美術館蔵
水草デザインに取り入れた斬新なお皿です。
正式な名前は知りませんが、
海藻サラダによく入っている赤い海藻のようなも描かれています。
江戸時代の人も、あの赤い海藻を食べていたのでしょうか。
ちなみに。
展覧会の冒頭では、イントロダクションとして、
四季それぞれの景色が、まとめて描かれている屏風絵が紹介されていました。
狩野元信 《四季花鳥図屏風》 室町時代 16世紀 岡田美術館蔵
オールシーズン使えるタイプ。
一年中出しっぱなしにしておきたい。
そんなめんどくさがり屋さんにピッタリの屏風です (←?)。
逆に、季節感を楽しみたいマメな人は、
シーズンごとに、掛け軸や屏風を変えていたのでしょう。
なお、担当学芸員さんによると、
四季のうち、やはり数が多いのは、春と秋の作品とのこと。
確かに、現代と違って、冷暖房が無い時代、
部屋に真夏や真冬の景色を飾るなんて、どうかしてますよね。
春や秋の穏やかな気候の景色を愛でたいものです。
美術は生活の役に立たない、と、とかく言われがちですが。
むしろ、ちゃんと生活の役に立っていたことを、改めて実感されられる展覧会でした。