美術館と図書館とが融合したユニークな施設、太田市美術館・図書館では、
2017年の開館以来、「本と美術の展覧会」 シリーズを不定期に開催してきました。
2022年の今年に開催されているのは、その第4弾。
“めくる、ひろがる―武井武雄と常田泰由の本と絵と―” です。
(注:展覧会は一部撮影可。展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
まず1つ目の展示室で紹介されていたのは、
「童画」 という言葉の生みの親・武井武雄です。
藤子不二雄や犬山イヌコを彷彿とさせるような、
芸名めいた名前ですが、武井武雄は、なんと本名!
親のネーミングセンスには、驚きを禁じえません。
・・・・・と、それはさておき。
会場では、武井武雄が描いた童画はもちろんのこと、
どこかパウル・クレーを想起させる彼の版画作品も展示されています。
中でも、是非とも注目して頂きたいのが、
武井武雄の究極のライフワークともいうべき刊本作品の数々。
刊本作品とは、武井が物語や絵を描き、
さらに、装丁や函に至るまでトータルで手掛けた小型絵本です。
これらは市販されたものではなく、300部限定発行で、
「親類」 と呼ばれる会員にのみ、実費で頒布されました。
その装丁のこだわりは並々ならぬものがあり、
本ごとに技法や素材をすべてを変えているほどで、
中には、螺鈿や寄木細工を使用したものも!
(↑職人さんもその都度自分で見つけていたとのこと)
エジプトをモチーフにした刊本作品にいたっては、
紙の繊維を確保するために、パピルスを栽培するところから始めたそうです。
その芸術性の高さから、“本の宝石” とも呼ばれる武井武雄の刊本作品。
当然、展示ケースの中に入っているので、
実際に 「めくって、ひろげる」 ことは出来ませんが。
展示室内に投影された映像で、
展示されていた8冊すべての全ページを観ることができます。
ただし、すべてを観るには、
1時間ほどかかってしまいます。
倍速とかできないので、フルで観たい方は、
時間に余裕をもって展覧会を訪れてくださいませ。
武井武雄に続いて紹介されていたのは、ドローイングや木版画、
コラージュなど多彩な技法で作品を制作している現代作家・常田泰由さん (1980~) です。
2つの展示室を結ぶスロープの壁に設置されていたのは、色とりどりのさまざまな形。
これらは版木に使うベニヤ板を切り抜いて作られたものなのだそう。
何かに似てるような形もあれば、
初めて目にするような形も多々ありました。
なお、このスペースは、写真撮影が可能。
インスタ映えしそうな壁です。
さらに、常田さんの作品で埋め尽くされたこちらの展示室も撮影が可能となっています。
カラフルでポップ。
眺めているだけで、心が軽くなる作品群なのですが。
その見た目とは裏腹に・・・・・
タイトルは、なんだか理系っぽい感じでした。
数Ⅱとか物理とか。
ちなみに。
展示室内のテーブルの上に置かれていたのは、
常田さんが近年手掛けているというミニブックのシリーズ。
木版画やコラージュ作品を制作した際に出た切れ端や、
刷られた後の版木といった欠片を使って作られるシリーズです。
テーブルの上のミニブックはお手触れ厳禁ですが、
展示室内の壁の棚に置かれた一部のミニブックに関しては、
ビニール手袋を着用すれば、実際にめくることができます。
めくって、ひろげることで、
思いかけないページに出逢えるかも。
僕は、ワークマンの看板みたいなページに出逢えました。