■さよならソルシエ (全2巻)
作者:穂積
出版社:小学館
発売日:(1)2013/5/10、(2)2013/11/8
ページ数:(1)186ページ、(2)183ページ
19世紀末、パリ。
のちの天才画家ゴッホを兄に持つ、天才画商テオドルスの、知られざる奇跡の軌跡。
生前、1枚しか売れなかったゴッホが、
なぜ現代では炎の画家として世界的に有名になったのか…。
その陰には実の弟・テオの奇抜な策略と野望があった!
兄弟の絆、確執、そして宿命の伝記!
(小学館コミック公式HPより)
「『このマンガがすごい!2014』 オンナ編で、見事第1位に輝き、
2016年と2017年には、2.5次元俳優によりミュージカル化もされている漫画です。
美術界一人生がドラマチックな男、ゴッホ。
それゆえ、彼を主人公にした映画や小説は、これまでに多々制作されてきました。
しかし、この漫画の主役は、ゴッホはゴッホでも、
フィンセント・ヴァンのほうではなく、テオドルス・ファン・ゴッホ。
愛称テオ。
画商として、実の弟として、
フィンセントを経済的にも援助した人物です。
展覧会で紹介される人物像でも、
フィンセントの半生を描いたこれまでの物語でも、
フィンセントを献身的に支えた一番の理解者という風に紹介されるテオですが。
この漫画に登場するテオは、従来のテオ像を一新する姿で描かれています。
一流画廊・グーピル商会の若き支店長テオ。
顧客のニーズを完璧に把握し、その行動を先読みすることから、
まるでソルシエ (=魔法使い) のようだ、と、一目置かれています。
しかし、ブルジョワジーを相手とする画廊の人間としては、
その行動に品格がないと、業界の人々からは苦々しく思われてもいます。
クールかつ俺様キャラ。
『恋はつづくよどこまでも』 の天堂先生か、
はたまた、『花より男子』 の道明寺ばりの俺様キャラです。
また、その兄であるフィンセントも、
一般的なエキセントリックなイメージとは真逆で、
怒りの感情が一切ない穏やかな人物として描かれています。
テオがフィンセントで、フィンセントがテオで。
まるで 『君の名は』 状態です。
フィンセントの画家としての才能を信じるテオは、
その作品を世に広めることこそが、自分の使命であると考えています。
ところが、当時の美術界の価値観では、
市井の人々を描くゴッホのような作品はまだ認められていません。
そこで、テオはロートレックら若き画家たちも巻き込み、
一般市民にも美術を広めるべく、ある方法を実行します。
果たして、その方法とは?
途中、美術界を舞台にした物語とは思えない、
バイオレンスなシーンが、たびたび登場しました。
僕が知らないだけで、この業界は、
裏では意外とバイオレンスが横行しているのかもしれませんね。
おー、怖い怖い。。。
全2巻。全12話。
展開がスピーディーなため、
あっという間に読み進められます。
読みながらやはりずっと違和感を覚えるのが、テオとフィンセントのキャラ設定。
一般的にイメージする2人とは、
どうも違うんだよなぁと、ずっとモヤモヤしていたところ、
最終話で、その伏線がちゃんと回収されました。一応。
このオチに関しては、漫画としては一応は納得できますが、
美術史的には、「さすがにそれは無理があるでしょwww」 というレベル。
そこは、ソルシエ (=魔法使い) のように、
違和感をキレイさっぱり消し去って欲しかったです。
(星2つ)」
~小説に登場する名画~
《星月夜》