現在、東京都美術館で開催されているのは、
“スコットランド国立美術館 THE GREATS 美の巨匠たち” という展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
イギリス北部に位置するスコットランド。
その首都エディンバラにあるスコットランド国立美術館の名品が多数来日した展覧会です。
出展数は約90点。
ルネサンスの作品から、ポスト印象派、ナビ派の作品まで。
5世紀の美術史を辿ることができる王道の展覧会です。
スコットランド国立美術館の存在は一応知っていましたが。
そのコレクションは把握していなかったので、
正直なところ、“「GREATS」 とは盛りすぎでしょw” と思っていました。
・・・・・・・・・ところが!!
エル・グレコはあるわ。
レンブラントはあるわ。
ベラスケスはあるわ。
他にも、ラファエロ、ルーベンス、ターナー、ルノワール、ゴーガン・・・etc
挙げればキリがないほどGREATSなラインナップに、
ケロッグのトニー・ザ・タイガーならぬトニー・ザ・アートテラー (←?) も、
思わず、「グーレイト!」 と声をあげてしまうほどの展覧会でした。
ロイヤル・アカデミーの初代会長を務めたレノルズの 《ウォルドグレイヴ家の貴婦人たち》 も、
東京会場限定で公開されるモネの 《エプト川沿いのポプラ並木》 もそれぞれ良かったですが。
出展作品の中で、特に印象に残っているのが、
ジョン・エヴァレット・ミレイの 《「古来比類なき甘美な瞳」》 という一枚。
この絵のモデルを務めたのは、子役俳優なのだそう。
確かに、一般人の子どもと違って、
プロっぽい表情をしている気がしました。
と、何よりも個人的に気になったのは、この子が着ている服。
子どもが着る服にしては地味なような・・・。
西松屋で売ってそうな。
しかも、お姉ちゃんが着て、その妹が着て、
さらにその妹が着てるくらいのお古感があるような。
もう少し子供らしく可愛らしい服装で描いてあげればよかったのに。
また、展覧会のラストを飾るフレデリック・エドウィン・チャーチの大作、
《アメリカ側から見たナイアガラの滝》(1867年) もド迫力で印象的な一枚でした。
フレデリック・エドウィン・チャーチは、アメリカを代表する風景画家。
そして、描かれているのも、アメリカの景色。
なぜ、そんな絵がスコットランド国立美術館に?
しかも、この展覧会のトリに?
と疑問に思っていたら、
なんでも、この絵は、スコットランドのつつましい家庭に生まれ、
渡米し、アメリカンドリームを掴んだ実業家が、母国愛から美術館に寄贈したものとのこと。
実は、スコットランド国立美術館は開館当初、作品購入の予算が一切なかったのだそう。
そんな美術館がこれほどのコレクションを形成できたのは、
ひとえに、地元の名士や市民たちからの寄贈や寄付金のおかげ。
そういう意味で、このチャーチの作品は、
美術館にとって記念碑的大作といえるのだそう。
なお、写真では大きさが伝わりづらいでしょうが、高さは約2.5mあります。
波しぶきが感じられるくらいの臨場感を味わえる作品です。
ちなみに。
展覧会には、巨匠の作品ばかりではなく、
日本ではまだ無名な作家の作品もちらほらあります。
その中で個人的にイチオシしたいのは、
19世紀スコットランドを代表する画家の一人というウィリアム・ダイス。
彼が描いた 《悲しみの人》(1860年) にグッと惹かれました。
キリストが描かれた絵画は、これまで何度も目にしてきましたが、
これほどまでに悲しみが伝わってくる絵には初めて出合いました。
画面全体から悲しみが滲み出ています。
話しかけづらい空気が、これでもかというくらいに漂っています。
画面の中央でなく、左にキリストを配置することで、画面右側がガランとした印象に。
それが、悲しみをより増しているのでしょう。
もう一点来日していた 《荒野のダビデ》 も良き。
イスラエル博物館展のレッサー・ユリィに続き、
この展覧会を機に、ウィリアム・ダイスがブレイクするかもしれません。
また、ある意味、印象的だったのが、
《ファルクホフ城の見えるネイメーヘンの風景》(1655~60年頃) を描いたアールベルト・カイプという画家。
芸術家一族に生まれたアールベルト・カイプは、
17世紀オランダで成功を収めた風景画家だそうです。
その彼について説明したキャプションには、こんな一文がありました。
「1658年に裕福な未亡人と結婚した後は、徐々に絵画制作から離れていった。」
・・・・・ヒモかよ。
最後に、どうしても気になってしまった絵画を紹介いたしましょう。
ジョヴァンニ・バッティスタ・ピアッツェッタの 《笛を持った男性と少年》(1730~40年頃) です。
画面右の少年が、どう見ても、
最近のいしだ壱成にしか見えません。