それは、今年2月初旬のこと。
ワタリウム美術館のミュージアムショップ、
オンサンデーズにて、実に気になるスーツと出逢いました。
メトロポリタン美術館やファン・ゴッホ美術館ともコラボを果たした、
東京のグラフィックカルチャーブランドTAGS WKGPTYが発表したスーツで、
ドイツのカリスマ芸術家ヨーゼフ・ボイスの《フェルト・スーツ》をオマージュしたものです。
展覧会で《フェルト・スーツ》自体は何度も目にしていましたが。
着てみるという発想がまったく無かったので、
実際に着られる《フェルト・スーツ》が作られていることに、
個人的には目からウロコなくらいに感動を受けました。
これは思い切って、アートテラーの新たな衣装として買おう!!
しかも、とある理由で衣装が一つダメになってしまいましたし。
そう思って、まずは試着させてもらうことにしました。
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スーツを着ているというよりも、
養生用のカーペットを巻き付けているかのよう。
自分で言うのもなんですが、まったくもって似合っていません。
ワンサイズ小さいのがあるのか、お店の人に尋ねてみたところ、
このスーツはフリーサイズで、このサイズでしか展開していないとのこと。
それでも、数万円だったら、購入したかもしれませんが、
さすがに、このダボダボなスーツに11万円を出せる気はせず。
悩んだ末に、その日は購入を見送りました。
しかし、それからしばらく経っても、
頭の中は《フェルト・スーツ》のことでいっぱい。
やっぱり買っちゃおうか、いや、すっぱり諦めようか。
その2択でずっと悩んでいたのですが、
ふと、3つ目の選択肢が思い浮かびました。
というか、何で最初から思いつかなかったのでしょう?!
ということで、スーツやシャツを作ってもらってる、
表参道のTAGARUのテーラーさんに相談してみることに。
フェルト生地でスーツを作れるものか、
と聞いてみたところ、たぶん大丈夫です、とのことでした。
ただ、《フェルト・スーツ》の襟やフロントは、
最近のスタイルではないので、近い形に縫製してもらえるか微妙なところ。
ましてや、ボタンとボタンホールの無いスーツなんて、これまで一度も作ったことがないとのこと。
本当にできるのか未知数ではありましたが、
いつもお世話になっているテーラーさんを信じて、
「すべてお任せいたします」と発注しました。
そして、本日ついに、アートテラーの新衣装が完成しました。
こちらです!
《フェルト・スーツ》を可能な限り、忠実に再現しつつも、
シルエットは体型に合わせて、太くなり過ぎないようにしています。
動きやすさにこだわっており、
見た目よりも軽く、肩回りも自由に動かせます。
ちなみに。
ヨーゼフ・ボイスがフェルトと同じくらいに、
作品に多用した素材が、脂肪(蜜蝋)です。
そこで、そのイメージに近い生地を裏地にしてもらいました。
と、こだわりの詰まった衣装なのですが。
一つだけ問題点が・・・・・。
それは、フェルト生地ゆえ、保温性が抜群であること。
5月のこの時点でも、温かすぎて、
とても長時間は着ていられませんでした(笑)。
これからさらに暑くなるわけで・・・・。
なので、しばらくは着用の予定はなく。
こうやって吊るして、
鑑賞用として楽しみたいと思います。