昨年9月より長期休館していた三井記念美術館が、
無事に改修工事も終わり、先日、リニューアルオープンいたしました。
見た目こそ、以前とまったく変わっていないので、
本当にリニューアル工事したのかと、一瞬疑ってしまいましたが。
空調設備が一新され、館内や展示ケース内の照明もLED化されたそうです。
また、実はひそかに傷んでいたという床も新たに張替えられたのだとか。
さらに、展示室内のカーテンもすべて、クリーニングされたとのこと。
変わっていないようで、ちゃんと中身は変わっていました。
もう、あの頃の三井記念美術館ではないようです(←?)。
さて、そんな新生三井記念美術館では、
2回にわたるリニューアル記念展が予定されています。
その第1弾として、現在開催されているのが、
“絵のある陶磁器 ~仁清・乾山・永樂と東洋陶磁~”という展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
三井記念美術館コレクションの中でも、
特に充実しているのが陶磁器のコレクション。
今展では、その中でもさらに、
絵が描かれている陶磁器にスポットが当てられています。
ろくろの名手と謳われた野々村仁清の手による作品や、
尾形光琳の弟である尾形乾山の作品も紹介されていましたが。
その江戸陶芸界のスター2人を差し置いて、
今展でもっともフィーチャーされていたのが、永樂保全。
江戸後期に活躍した京焼の陶芸家です。
永樂保全の一番の才能は、何といっても“写し”の巧さ。
景徳鎮で焼かれた染付である祥瑞も、
主に有田や伊万里で花開いた金襴手も、
永樂保全の手にかかれば、ご覧の通り。
どんなスタイルも、本物そっくりに完コピできる。
陶芸界のJP、陶芸界のミラクルひかるともいうべき人物です(←?)。
何より彼がすごいのは、磁器も陶器も、
陶磁器全般を再現できてしまう点にあります。
かつて中国南部で焼かれていたという交趾(こうち)焼も、完璧に再現していました。
ちなみに、こちらの《交趾釉鳳凰宝尽文八角火入》も交趾焼の写し。
黄色と緑のコントラストを観ていたら、懐かしの板ガム、
ロッテのクイッククエンチを思わず連想してしまいました。
が、もちろん、この作品は、
クイッククエンチを写したわけではないようです。
また、展覧会では、保全の長男である和全もフィーチャーされています。
この父にして、この息子あり。
父親譲りの写しの才能をいかんなく発揮していました。
さらに、和全は写しにとどまらず、
オリジナルなスタイルの作品でも、その才能を発揮。
晩年近くには、華やかな写しの作品とは真逆の、
侘びた風合いの地味深い菊谷焼と名付けた作品を制作しました。
また、まるで表面に布を貼り付けたかのような「布目」という技法も考案しています。
これまであまりフィーチャーされる機会の少なかった永樂親子。
この展覧会を機に、知名度が上がることを期待したいと思います。
なお、展覧会には永樂親子の作品以外にも、
これまであまり公開される機会がなかった陶磁器が多く出展されていました。
リニューアル記念ということで、ここぞとばかりに、
三井記念美術館の秘蔵っ子たちが公開されています。
個人的に一番印象に残っているのは、こちらの陶磁器です。
草間彌生さんの新作グッズかと思いきや、
17世紀明時代に作られた祥瑞の香合とのこと。
キャプションには《祥瑞蜜柑丸文香合》とありました。
カボチャではなく、どうやらミカンであるよう。
ということは、このミカンが上下にパカッと空くわけですね。
タマが中から登場して腰を振って踊る。
『サザエさん』 のオープニングのあのシーンが思わず脳内再生されました。