住友家が蒐集した美術品を保存・公開する泉屋博古館の東京分館が、
今年3月に、泉屋博古館東京と名称を変え、リニューアルオープンしました。
その再開記念の館蔵品展第1弾として開催されていたのが、
前回の“日本画トライアングル 画家たちの大阪・京都・東京”。
泉屋博古館の日本画コレクションにスポットを当てた展覧会です。
続く第2弾として、5月21日よりスタートしたのが、
住友家の洋画コレクションにスポットを当てた展覧会です。
ピカソにシャガールにルオーに、
浅井忠に熊谷守一に香月泰男に、と、
実は意外と洋画も充実している住友コレクション。
今展では、コレクションの目玉となる名品から初出品の作品まで、
約1.5倍に拡張された展示室全体を使って一挙蔵出しされています。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
その中でも特に見逃せないのが、こちらの2点のモネの絵です。
“・・・・・いやいや、モネなんて、
日本の美術館はわりとどこも持ってるじゃん?”
そう思った方は、少なくないことでしょう。
しかも、向かって右の《モンソー公園》も、
左の《サン=シメオン農場の道》も、モネの作品としては地味目。
睡蓮や積みわら、ポプラ並木をモチーフにした絵と比べると、そこまで華もありません。
ところが、何を隠そう、この2点のモネの絵には、
1897年に住友家15代当主・住友春翠 がパリで購入し、
1900年には日本入りしたことが記録として残っているのです。
つまりは、日本に初めてやってきた記念すべきモネの絵。
ジャイアントパンダで言えば、カンカンとランランに相当するモネの絵なのです(←?)。
他にも、美術界No.1浴衣美人の呼び声高い岡田三郎助《五葉蔦》や、
風景画家の第一人者として活躍した吉田博の妻、吉田ふじをによる水彩画《神の森》、
なぜか麗子が同キャラ対戦のようになっている?
謎多き岸田劉生の《二人麗子図(童女飾髪図)》など、
有名作家の見逃せない作品は多々ありますが。
ネクストブレイク候補が続々登場した前回の日本画展と同様に、
今展でも、作家の知名度こそ低いものの隠れた名品も多々ありました。
例えば、仙波均平なる画家による《静物》。
明治43年に描かれた静物画です。
確か、昭和の前半までは、バナナは高級品だったはず。
ということは、バナナが3房も描かれたこの絵は、
当時の人にとっては、マスクメロンや完熟マンゴーが、
これみよがしに描かれているように見えていたのかもしれませんね。
余談ですが、僕はバナナが大の苦手なので、
目に飛び込んできた瞬間に、「ウッ!」となりました。
続いては、川久保正名の《海岸燈台之図》。
川久保正名は、明治に活躍した洋画家で、
「勧画学舎」という画塾を開設し、後進の指導にも当たっていました。
その門下生には、のちに陶芸家となる板谷波山もいたのだとか。
この絵は、明治36年に大阪で開催された第5回内国勧業博覧会に出品されたとのこと。
おそらく描かれているのは、銚子の犬吠埼だそうですが。
・・・・・・・なんでまたこんな遠くから描いたのか。
せっかくならもっと近くで描けばいいのに。
なお、川久保はこの絵を出品した翌年、
明治37年頃から行方が分からなくなっているようです。
消息は一切不明とのこと。
FBI超能力捜査官に是非とも探して頂きたいものです。
さらに、今展では、没年どころか、生年も不明、
師弟関係や経歴にいたるまで一切不明の謎の画家、
「田村直一郎」による明治38年制作の絵画が初公開されています。
特筆すべきは、その厚塗りっぷり。
このような技法を使っていた画家は、
当時日本ではまだ他にいなかったとのこと。
もしかしたら、田村なる人物は、
未来からタイムスリップしてきた人物なのかもしれません。
信じるか信じないかはあなた次第です。