現在、たばこと塩の博物館で開催されているのは、
“パッケージで時間旅行 記念・観光たばこの世界”という展覧会。
1993年をもって終了したという今は無き、
記念たばこと観光たばこにスポットを当てた展覧会です。
記念たばことは、記念行事や博覧会などが開催される際に、
パッケージに特別なデザインを施して、期間限定で販売されたたばこのこと。
その第一号は、御大典記念たばこ「八千代」。
大正4年、大正天皇が即位式を挙げたのに合わせて販売されたそうです。
「八千代」以降、終了する1993年まで、
さまざまな記念たばこが販売されました。
ヴェルサイユ条約発効を記念したたばこもあれば、
日中戦争が勃発した頃の時局を反映するたばこ、
東京オリンピックの開催を記念したたばこ、
東海道新幹線の開通を記念したたばこなどもあります。
そのような国際的、国家的イベントを記念したたばこもあれば、
18年ぶり8度目の阪神タイガースの優勝を記念したたばこもありました。
さらに、現代では考えられないような記念たばこも。
こちらは、大阪の松坂屋が増築された際に、
来客に配られたというノベルティグッズの記念たばこ。
喫煙率が高いこの当時だから成立するノベルティです。
今の時代なら、コンプライアンス的に問題になりそうな気がします。
また、かつては展覧会の開催を記念したたばこもあったそう。
これも今の時代なら、展覧会グッズとして、
提案した時点で、おそらく即却下になることでしょう。
昭和時代のたばこの市民権の高さには、ただただ驚かされるばかりです。
と、それだけ日常にたばこが溢れていた時代ゆえ、
当時は、広告付きのたばこも存在していたのだとか。
きっと、当時の紀文の豆乳は、
「からだにマイルド」というコピー繋がりで、
マイルドセブンに、広告を載せたのでしょう。
豆乳は身体にマイルドでも、タバコを吸ったらプラマイゼロ。
むしろ、一箱吸ったら、マイナスになるような。
ちなみに。
数ある記念たばこの中には、
美術界の巨匠がパッケージを手掛けたものも。
例えば、こちらは堂本印象。
例えば、こちらは福田繁雄。
皇太子明仁親王と正田美智子さんの結婚を記念して、
昭和34年に発売されたこのたばこのパッケージをデザインしたのは・・・
なんと、昭和を代表する日本画家・川端龍子。
展覧会では、その貴重な原画も展示されていました。
さてさて、本展のもう一つの主役である観光たばことは、
全国各地の観光地やお祭りをパッケージにデザインして販売していたたばこのこと。
いうなれば、地方限定たばこです。
記念たばこ同様に、さまざまなデザインのたばこがありました。
その中で個人的に気になったのが、
兵庫の宝塚歌劇団デザインのたばこ。
「清く 正しく 美しく」の宝塚歌劇団が、
よくぞこのようなデザインをOKしたものです。
記念たばこと観光たばこ。
現代とは違って、昭和時代は、
たばこがいかに身近な存在であったかを実感させられました。
昭和は遠くなりにけり。
そんな気持ちになるノスタルジックな展覧会です。
ちなみに。
たばこの消費量が多かった昭和時代。
使用済みのたばこの空き箱を使って、
傘のペーパークラフトなどがよく作られていたそう。
そんな空き箱のペーパークラフトに特化した大会も開催されていたようで。
展覧会では、第2回たばこペーパークラフト青梅営業所大会の特選作品も紹介されていました。
たばことその空き箱で再現された金刀比羅宮です。
どんだけニコチン吸ったんだよ。