日本全国のダリファンの聖地こと、
福島県の諸橋近代美術館に行ってきました。
現在開催されているのは、“ヒストリア~神話と物語の世界~”という展覧会。
こちらは、神話や聖書、古典文学といった物語をキーワードに、
ダリ作品を中心とする諸橋近代美術館コレクションを紹介する展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)
ダリと言えば、20世紀最大の奇才。
神話や聖書、古典文学といったものに、
一切、インスピレーションを求めることはなく、
自分自身から湧き出てきた世界観で作品を制作している。
そんなイメージがなんとなくありましたが、
実は意外にも、神話や聖書をテーマにした作品を多く描いていたようです。
例えば、身体がサイ、足が蜘蛛のような怪物(?)宇宙サイ。
こちらは、もともと聖アントニウスの誘惑を、
モチーフに描いた絵画作品に登場したキャラクター。
もちろん怪物の造形自体は、ダリのオリジナルですが、
元ネタは、キリスト教の聖人をテーマにした代表的な画題だったのですね。
「聖アントニウスの話って何?」って方は、こちらをどうぞ↓
ちなみに。
その奥に見えているクジャクをモチーフにしたタペストリーは、
ゼウスの妻ヘラとヘルメスが登場する神話のエピソードが元になっています。
その神話が知りたい方は、こちらをどうぞ↓
さて、ダリは神話や聖書だけでなく、
古典文学をテーマにした作品も手掛けています。
その一つが、ダンテの『新曲』。
実は、1950年、ダリが50歳半ばの時に、イタリア政府より、
ダンテ生誕700年を記念する『神曲』の挿絵制作依頼がオファーがあったそう。
従来の地獄のイメージを覆すべく、
水彩画で『神曲』の世界を表現しました。
ところが、イタリアの国家的プロジェクトにも関わらず、
スペイン人であるダリにオファーするのはいかがなものなのか、
イタリア国民からそんな声が上がってしまったため、計画は頓挫するはめに・・・。
しかし、それらの水彩原画を基にした版画作品集が、
のちにパリの出版社から出版されることとなったそうです。
まさしく地獄に仏ですね。
また、古典文学と言えば、スペイン繋がりで、
セルバンテスの『ドン・キホーテ』の挿絵も手掛けています。
こちらは、その表紙↓
『ドン・キホーテ」というタイトルよりも、
ダリの名前の方が大きく表記されています。
そこからしてすでに、さすがダリといった印象ですが。
挿絵そのものもダリワールドが全開でした。
なんと、この『ドン・キホーテ』の挿絵には、
インク弾を詰めた火縄銃を片麻岩に向けて撃ち放つという、
前代未聞の、というか、ダリ以外誰も思いつかない手法が用いられているそうです。
さすが奇才。
なお、会場では、この『ドン・キホーテ』に関して、
と思われるダリの言葉の引用も紹介されていました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
何度も読み返してみましたが、
一つも意味が分からなかったです。
さすが奇才(パート2)。
ちなみに。
展覧会のラストでは、ダリのヒストリア、
つまり、ダリ自身の伝記が展示されていました。
タイトルは、『ミューズの影』。
ダリと同じカタルーニャ出身の作家、
ジョゼフ・プラによるもので、全編カタルーニャ語で記述されているのだとか。
何よりも驚くべきは、その大きさ。
お歳暮で届くアサヒスーパードライくらいの大きさはありました。
しかも、本の中には、鉄板が入っているとのこと。
やっぱりダリ。
伝記もただものではありません。